… … …(記事全文3,260文字)●ずっと入院していた方が楽
両親がともに入院していてくれたおかげで、私は選挙運動を行うことができた。母は、もうこの家に帰って来ることはないだろう。父は、すっかり元気を取り戻して退院する気満々だった。社会福祉士の「早く退院しろ」というプレッシャーをはねのけ、できる限り退院の時期を延ばし、期限ぎりぎりまで入院させていた。
退院前、それ用の服を持って来いと父が要求するのを無視していたら、帰省していた妹にこっそり頼んでいたらしい。どうして退院するのに、オシャレをしなければならないのか。普段病院で来ていない、ジャージの上下があるじゃないか。それで十分だ。誰に見せるんだ。そんな私の小言を父は聞きたくなかったのだろう。医師に挨拶するために、身なりを整えるのだそうだ。
帰宅してからも、翌日からハガキを書き始める。医師や看護師への礼状である。そういったものは必要ない、と諭しても聞く耳を持たない。早く投函して来いと私に言うだけだ。全く変なめんどくさいじいさんである。恐れていた父との二人暮らしがいよいよ始まったかと思うと気持ちが重くなる。いっそのことずっと入院していてくれた方がどれだけ楽かと思ってしまう。
●かかりつけ医受診 他人事
入院していた病院からは薬が1週間分しか処方されないため、それ以降はかかりつけ医でもらってくれとのことだった。私は、あの天下のやぶ医者には死んでも行かない。顔も見たくない。そこで、弟が連れて行くことになった。診察時、弟は医師に、「こちらで診断していただいた痔が原因ではありませんでした。大腸に癌が発見され、そのため腸閉塞を発症しました。一命は取り留めましたが、その後の癌摘出手術の結果、人工肛門を装着することになりました」と皮肉を込めて告げた。すると医師は、「それは聞いています。それにしても、ご高齢なのに、お元気で良かったですね」と自身の誤診などは意に介さず、こう続けた。「診断と手術の経過、人工肛門の装着状態などが分かる資料を提出してもらわないと薬は2週間分しか出せません」と全く他人事だった。一方で、父は相変わらず頭が上がらない状態だったのには呆れる。
●翌日に熱中症?
かかりつけ医へ行った翌日、熱があると父が騒ぎ出した。前日夕食はしっかり食べたにも関わらず、夜中に一人で簡単な食事を用意し食べた。その後の片づけに指がうまく動かず、こぼしてしまったというのだ。まず、夜中に一人で食事をするるなど、やってはいけないことだ。自分が要介護者であることを忘れている。
病院に比べたら、自宅は気温が高い。エアコンを強くすると寒いと言い出す。環境の違いに適応できていない。昨日暑い中病院へ行ったことから、熱中症の疑いもある。頭と脇の下を冷やし、部屋の温度を低めにした。水分も多めに与えた。「少し休めば楽になるから」と言い聞かせた。
●「脳梗塞だ 救急車を呼べ」
眠っていると思ったら、1時間もしないうちに、「おーい、おーい」と叫び声が聞こえてくる。「どうしたの」と訊くと「救急車を呼んでくれ」という。「呼ぶのはいいけど、どこがどう悪いのか分からないと」と返すと、「指がよく動かないから、軽い脳梗塞だ。薫(弟)を呼べ」と訴える。「脳梗塞の人が自分で脳梗塞と言
