… … …(記事全文3,848文字)毎週こんな話ばかりで恐縮する。しかし、スピーディーな対応はしてもらえず、こちらの要望は聞いてもらえない地方の医療・福祉の現状に危機感を抱いているためで、お付き合いいただければ幸いである。
●「手術を受ける」と母
長岡市のS病院へ移された母が「味噌漬けが食べたい」と訴えていたと面会した弟が言うので、それを持って面会に行った。母は個室に入っており、私が味噌漬けを差し出すと見向きもせず、手に握りしめたナースコール(ハンド形子機)のボタンを押した。「どうしました」というスピーカーを通じての看護師の声が母には聞こえないらしい。看護師が部屋に訪ねて来て「何ですか」と問うと、母は「浣腸の後の…」と呂律の回らない声でよく聞き取れない。「お客さんが帰ったらやりますから」と看護師。どうやら、浣腸をしてもらい、その後処理をお願いしているようだ。
その後もボタンを連打する母。「もう止めなよ。俺が帰ったらやってくれるから」となだめると、今度は「手術を受けようかな。受けたい」と言い始める。医師から、手術は困難と伝えられているはずだが。「手術はできないんだよ。命にかかわるからね」と言って聞かせても納得できない様子だった。すると「目薬(緑内障用)がないので持って来てくれ」と要求が変わる。私にも精神状態が不安定なのが分かる。「家にあった目薬は全て持って来たはずだよ。もし、なければこの病院で処方してもらえばいいんだ」と説明し、看護師にも伝えた。
面会は週一回、15分間と制限されているため、「また来るから」と病室を後にした。看護師に「何度もナースコールボタンを押して申し訳ありません。よろしくお願いします」と謝ると、「大丈夫ですよ。押せるだけまだ良いです」と寛大な言葉が返って来た。このS病院では、治療はしていない、しかも個室に入っている、早く転院させないといけないと考えながら家路についた。