… … …(記事全文3,430文字)●父は人工肛門など知らない
前稿で97歳と超高齢の父が大腸癌の手術を受け、術中に癌の広がりが想定よりも大きいことが判明、急遽人工肛門を付けることに変更されたことを述べた。繰り返しになるが、手術前は、癌を切除し残った腸どうしを縫合する方針であった。医師も自身のリスクヘッジのため、考えられるすべての偶発症について説明した。父は耳が遠いこともあり、人工肛門の名前はおろかその存在さえ知らなかったはずだ。
手術後、全身麻酔が覚めたころ、私と弟で声をかけた。何か言いたそうだったが、言葉にならなかった。おそらく、誰が声をかけたのか認識できないほど朦朧としていたのだろう。その様子から、意識がはっきりした後、腹の脇に見たことも聞いたことないものがあることに気が付いた時、父は何を思うのか不安になった。
●人工肛門をようやく理解した父
翌日、面会に行くと、人工肛門について医師から説明があったが、よく理解していないようだった。そこで、私と弟で説明したところ、大きなショックを受けた様子を見せることなく、ようやく機能の概要は理解したようだった。しかし、装具や使用方法など細かい点については、私たちも理解していなかった。