… … …(記事全文4,776文字)●トランプ大統領再任も情勢は大きく変化
トランプ氏が再び米国大統領に就任した。直後から信じられない発言と暴挙を連発している。「カナダを51番目の州にする」「グリーンランドを自国の領土にする」など。ここで考えてみると、対中国に関して軍事的な拠点となる日本はどうなのか。51番目の州にするなどと言う必要はなく、今も「米国の植民地である」という認識を持っているというのであれば腑に落ちる。また、「この国には男性と女性しかいない」との発言や不法滞在者の強制送還、WHOからの脱退、「パリ協定」からの離脱等々、好き放題・やりたい放題のトランプ大統領には目も当てられない。
そのトランプ大統領が対北朝鮮、とりわけ金正恩総書記とどのような関係を築こうとしているのかは不透明である。この4年間で情勢は大きく変化しているからだ。少なくとも2018~2019年の友好交流を再びというわけにはいかないだろう。北朝鮮はロシアとの関係を強化しており、「包括的戦略パートナーシップ条約」が正式に発効し、ロシアとの軍事同盟を復活させた。実際、北朝鮮人民軍がウクライナの最前線に派兵され、多くの死傷者が出ていると報道されている。
ここで話が脱線するが、北朝鮮兵士は一人当たり数千ドルが支払われウクライナへ派遣される。通常の手当がドル単位である兵士からすれば高待遇である。しかし、このお金は全て金総書記に入り、政権の大きな収入源となっているという。また、ウクライナ近傍に行けば北朝鮮兵士に亡命・脱北する者が増えるという説がある。だが、それは少数に限られ、北朝鮮に残る家族の安全を懸念すれば、簡単に脱北できないのが実態のようだ。
また、北朝鮮人民軍兵士は、捕虜になるのなら自決せよと教育されている(戦時中の日本と同様)ため、捕虜になる可能性は低い。また、ロシア兵士が高齢でろくに訓練を受けていないのに対して、北朝鮮人民軍兵士は実践訓練を受けているため、兵士としての資質には大きな差異があるのが現実のようである。ただし、北朝鮮人民軍兵士はドローン攻撃には慣れておらず戸惑っているとの情報もある。
●「日朝平壌宣言の原点に立ち返り」の矛盾
話しを戻す。もう一つの関係国韓国はどうかというと、尹錫悦大統領の弾劾、起訴で政情は極めて不安定である。肝心の日本は、石破茂首相が「楽しい日本」という言葉を国会で使い批判を浴びるという吞気ぶりが露呈している。拉致問題に関しても旧態依然としており、所信表明演説では「日朝平壌宣言の原点に立ち返り」と言ってのけた。石破首相の言う「原点」が何かは分からない。しかし、旧来から述べているとおり、日朝平壌宣言に原点に立ち返ろうが、則ろうが、その途端に論理矛盾が生ずるのだ。
私は日朝平壌宣言を全否定するものではないが、国交正常化ありきどうしの拙速な合意の産物であることは否めない。つまり、「5人生存8人死亡」を当時の小泉純一郎首相が認めたうえでサインしたのが日朝平壌宣言なのである。したがっ