… … …(記事全文3,995文字)●認知症ではないとの診断
母の暴力的な言動、日常的な愚痴に悩まされ、家族内のみならず外へも影響を及ぼす事態になっていた。事情に詳しい親友のMから「認知機能の低下により穏やかになるケースと、逆に険しくなるケースがある。専門医療機関を受診した方が良い」という助言を受けた。その際、本人が受診を拒むことがあるようならば、「かかりつけ医から本人に受診を勧めてもらうのも一つの方法だ」と教えてもらった。
その教えに従い、かかりつけ医から紹介状を書いてもらい、K病院の精神科を受診させた。その結果、「認知症検査は百点満点だ」といわばお墨付きを与えられた。しかし、医師は「すべてイライラが高じてのもの、『セロトニン作動性抗不安薬』を2週間分処方するので、様子を見てまた来なさい」「イライラしたら愚痴はここへ来て言うように」との診断を下した。
Mによれば、「複雑性PTSDの可能性もある。もっと綿密な診療をしてくれる医者に行った方がいい」ということだった。なるほど、母は弟の失踪~後に北朝鮮による拉致という長期間にわたる被害を受けた経緯があるので頷ける。しかし、この地ではそういった高度で患者に寄り添った医療を受ける体制が整っていない。何しろ新潟県は、人口10万人当たりの医師数が全国ワースト4と医師不足が深刻な問題となっているのである。仮に医療機関があったとしても、母は行くはずがない。もう手の打ちようがないというところまで旧稿で述べた。
「警察に通報 母は私をどうしたいのか その後」(2024年4月12日配信)
https://foomii.com/00200/20240412053000122796
母は自信満々であったが、ゴールデンウイーク前に受診することができなかったため、それを気にかけている様子を見せていた。連休明けに受診し、同じクスリを処方してもらい、それ以降、気持ちは比較的安定していた。
●隣家の工事の音がうるさい
しかし、5月下旬になると精神的に変調を来し始めた。朝起きて来ると、「隣の家が夜中に何か工事をしているようで眠れない。止めるように伝えてくれないか」と不満をぶちまけた。そのような事実はないため「どういうことか」と尋ねると、「機械を使って穴を掘っているようだ。ガーン、ガーンという音が騒がしい」とのことだった。
2日目も3日目も同じことを訴える。私もその時刻に母の寝室で耳をそばだててみた、全く聞こえない。元々耳の遠い母が聞こえるということは、相当大きな音であるはずなのだが。そこで、耳鳴りが酷いのではないかと考え、耳鼻咽喉科医院へ連れて行くことにした。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)