Foomii(フーミー)

蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

消防士が水難救助訓練中に死亡 直近に体調不良訴え訓練中止も

●親友の住職は文化活動にも尽力

 私の幼馴染の親友に真言宗豊山派「金泉寺」の住職を担う小林がいる。彼は、若い頃から演劇に造詣が深く、本業の傍ら、現在でも地元の演劇活動に参画したり、寺の本堂を活用したライヴ、落語、映画上映などを開催したり、文化活動にも精を出している。また、柏崎刈羽原発建設・運転に対し、古くからデモ、集会、座り込みなど反対運動を行っており、私が東京電力の本店勤務時代に直接抗議の電話をかけてきたこともあると旧稿で述べた。


 この日も、10月27日に開催する「森下“Bookie”寿一 AUTUMUN NIGHT 金泉寺」と銘打ったライヴの準備打ち合わせをしていた。森下氏は、主にピアノ(キーボード)を操りながら歌う浜松市出身のミュージシャン。メガヒットはないものの「頭脳警察」「PANTA」「三原綱木」「ジョー山中」「鈴木ヒロミツ」「Al Jardine」等々多くのバックサポート務めるほか、自身のバンド「HOT KUMA」「TOKAI BEATERS」でも活動を続けるキャリアの持ち主である。私と森下氏とが浜松市で出会ったのが縁で、毎年柏崎へ来てくれるようになり、金泉寺でのライヴは今回が3度目である。


●住職と私の会話から

 小林の話を発端にして、こんなやり取りをした。

「柏崎の消防士が海で亡くなったのを知っているよな」

「ああ、訓練中で溺れたのは新聞で読んだ」

「実は、うちの檀家さんで、葬儀を執り行った。26歳という若さで逝くというのは、読経をしていても痛ましい。言っては悪いが、高齢者についてはそれなりの覚悟ができているからな」

「若すぎる。亡くなったのは確か10月14日、なぜ1週間経ってから葬儀を」

「ずっと検死をしていたとのことだ。ご遺族は非常に不満を訴えていた」

「不審な亡くなり方だったのか」

「検死は必ずやるのだろう。指導員1人と亡くなった彼を含めて3人が水難訓練で海の沖合を目指して泳いでいる途中、姿を消した。見つかったときは心肺停止だった」

「姿を消したなら一緒にいる人たちはそれに気が付かなかったんだろうか」

「それが不思議なんだ。彼は、中学時代から野球の選手で地元の有力校から甲子園に出場している。レスキュー隊員を志望したほどだから体力はあったはず。ただ、夜勤明けだったらしい」

「訓練そのものに過失とか瑕疵はなかったんだろうか。労務管理上も」

「そこは気になるところだ。葬儀には数百人が参列したが、訓練に参加した人は誰も姿を見せなかった。精神的にショックを受けているからという理由だったが」

「それはおかしいな。何かやましいことでもあるのか」

「せめて指導員だけでも来て、ご焼香くらいして欲しかった。故人は来年結婚予定で婚約者とその家族も来ていた。お兄さんは今年結婚予定だったが、延期を余儀なくされた」

「並走するボートとか、救命胴衣とかなかったのかなあ」

「その辺はよく分からない。ただ、そこははっきりしておかないと。故人は浮かばれないし、ご家族も納得しないだろう」

「警察は動いていないのだろうか」

「それもよく分からない」     


●警察が捜査 市議会も調査 消防署長に聴き取り

 小林と私が不審に思っていたところ、新潟県警が業務上過失致死容疑で柏崎市消防本部を捜索しており、安全管理に問題がなかったかを調べているとの報道があった。


 報道から約10日後の11月8日、事故を調査している柏崎市議会総務常任委員会が柏崎消防署の山崎定義署長らを呼び、質疑が行われた。この様子を県内メディアが一斉に報じたことから、ようやく事故の全容が明らかになった。


 事故は10月13日午前、柏崎市でも有数の番神(ばんじん)海水浴場における水難救助訓練中に発生した。消防士が溺れた現場は、沖合約70メートルにある消波ブロック付近。当日の天候は晴れで海も穏やかだったという。亡くなったのは入澤武弘さん(当時26)で死因は溺死だった。


 訓練は、入澤さんを含む3人の隊員と指導役の隊員1人が参加し、午前10時ごろ開始された。沖合の消波ブロックを目指し、水深約1メートル前後を潜水(ウエットスーツ、酸素ボンベ装着)で移動していた。異変に気づいたのは10時27分。指導員と訓練者の2人が消波ブロックに着いた後、入澤さんの「助けて」と叫ぶ声を聞いて、溺れていることに気が付き(沈んで行くところを目撃)、2人が海に潜り水深4メートル付近から入澤さんを引き上げた。テトラポッドで蘇生処置を行った後、砂浜に移動し蘇生処置を続けたが、すでに意識がなく、ドクターヘリで病院に搬送され翌14日、死亡が確認された。


●直近に体調不良で訓練中止も

 入澤さんは、今年7月と9月にも同じ番神海水浴場で水難救助訓練に参加していた。その際、鼻から出血がみられたり、途中で吐き気を訴えたりして訓練が中止になっていたことが明らかになった。しかし、消防は今回の訓練実施に問題はなかったとの認識を示したという。

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