… … …(記事全文4,954文字)●リハビリ成績は「優秀」
父が夜の庭先で転倒、骨折し救急搬送され、手術後リハビリ病棟へ移動したことは、旧稿で述べた。
9月1日配信「真夏の夜の出来事」
https://foomii.com/00200/20230901052000113488
リハビリに専念する父の容体は、歩行器を使っての歩行が可能になるまで順調に回復している。担当の理学療法士によれば、リハビリ成績は「優秀」で、これからは、けがを負う前と同じ杖をついた歩行に挑戦する段階に来ているとのことだった。
その後、社会福祉士も加わり退院後の自宅での生活に必要な介護や支援対策について相談した。具体的には、自宅に入るまでの段差の存在やその高さ、室内における動線、トイレや風呂を利用する際の問題点などへの対処を検討するため、私が撮影した写真をもとに話し合った。まだ、介護認定はされていないが、20センチメートルまでの段差を乗り越える訓練をしていることから、ほとんどの段差は一人でもしくは少しの支援で克服できる見込みであるとの判断が示された。
最大のネックは入浴であり、浴室へ入る際の段差、バスタブの高さ・深さから考えると、単独では難しく支援が必要とされ、バスタブ内に椅子を置く必要があるとの指摘を受けた。ただ、退院までには猶予があるので、それまでに対策を検討すればよいとのことで安堵していた。
●家族(私)の役割
毎週火曜日と金曜日の午後の入浴時に出る洗濯物を受け取るとともに、洗った衣服を届けるために病院を訪れる。時間は、わずか15分間に制限されているが、できる限りリハビリの成果をこの目で確認するため面会する。また、自宅のことを心配しがちな父に対して、問題はないのでリハビリに専念するよう励ます。こういったことが私に与えられた役割だ。
訪れる度に、歩行能力が目を見張るほど進歩しており、このままいけば、けが前の状態に戻るのも夢ではないと希望が持てる。したがって、好物の飴やせんべい、ジュースを病院内の売店で買って来いとねだられるのも、精神的にも回復している兆候と前向きに受け止めることができていた。
●主治医からの電話
経過が良好であると家族は胸をなでおろしていた。この日も午後、母とともに病院へ面会に行く予定になっていた。その矢先に、主治医から突然電話がかかってきた。
「お父さんがコロナに感染しました。熱が出て若干の倦怠感があったので、検査をしたところ陽性でした。このため個室に移動してもらい、3日間点滴を実施します」
寝耳に水の話で、用事を済ませ車庫入れしたばかりの車中で受けたこともあり、とても冷静ではいられなかった。「体温は、血中酸素飽和度は、抗原検査ですか」と尋ねるのが精一杯だった。返答は「38℃、98%と正常、PCR検査です」であった。そして「今後の面会等については、後刻看護師から連絡させます」と伝えた主治医は、最後にこう付け加えた。「私は9月末日をもって異動します。後任が決まりましたら改めてご紹介します」。私は、ただ聞いているばかりだった。
●看護師へ電話
気持ちが落ち着いてから考えてみると、病院でコロナ感染とはどういうことなのか、呼吸器系に異常はないのか、主治医の説明もずいぶんと雑ではないか、といった疑問がふつふつと湧いて来た。
看護師からは一向に電話が来ないため、業を煮やしてこちらから電話をした。
「電話がないのでこちらからかけました。面会と洗濯物の受け渡しはどうしたら良いのでしょうか」と問うと、「個室で10日間隔離が必要となりますので、その間の面会は禁止です。洗濯物は、基本的にこれまで通りで結構ですが、コロナということで気が引けるようでしたら専門の業者さんのお願いすることも可能です」という返答があった。
「呼吸器系に異常はないのですか」には「ありません」との回答。続けて「コロナの院内感染ですが、病院側の責任ですよね。したがって、治療費等もそちらが負担すると考えてよろしいですか」と尋ねると、「その件については、こちらからは何ともお答えいたしかねます」と返ってきた。4月27日、新型コロナ5類感染症への移行に伴い、9月末日までは、医療費の一部公費支援が行われる経過措置があるのは折り込み済みで質問したのだが、明確な回答は得られなかった。
●主治医から再度の電話
間を置かず再び主治医から電話があった。どうも「病院の責任・負担」が彼を憤怒させたらしく、最初は柔らかい口調だったものの、次第に語気が強くなる半ば逆ギレのお説教だった。電話でのやり取りを以下に再現する。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)