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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

必読「3.11 大津波の対策を邪魔した男たち」(島崎邦彦)

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230407060000107620 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 ////////////////////////////////////////////////////////////////  東京大学名誉教授で日本地震学会会長・原子力規制委員会委員長代理を歴任した島崎邦彦氏が、3月末「3.11 大津波の対策を邪魔した男たち」というタイトルの「告発本」を上梓した。これは意外であり、正直驚いた。なぜならば、かつて「原子力ムラ」の住人だった私の経験から、原子力関係の大学教授といった御用学者たちは「原子力ムラ」の構成員であるのが常識であり、しかも規制側の職にも就いていたからだ。  しかし、島崎氏は違った。同書で「20年近く政府機関に関係してきたが、原発がらみで不思議なことがちょくちょくあった」と吐露しているとおり、あくまで地震学の専門家だったのである。だからこそ、自身の矜持から、当事者でなければ分からないことを克明に綴ったのだと推測する。   早速、読んでみた。内容は身に覚えのあることが多く、あっという間に読み終えた。専門的な記述もあるが、そこを割愛しても十分に理解できるため、できる限り多くの人に読んでもらいたい。その観点から、本稿では「ネタバレ」にならないよう、本の紹介はあらましに留めポイントとなる事実を記述したい。 ●当事者でなければ書けないこと  2002年7月、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(「長期評価」)を取りまとめ、「日本海溝沿いの三陸沖から房総沖のどこでも津波地震が起きる可能性がある」と指摘した。  この「長期評価」を巡っては、次の内容が報道等により一般に知られている。 東京電力や通産省原子力安全・保安院(当時)は、速やかな対策をとらず、東京電力は「長期評価」に基づいた津波高さの計算を子会社である「東電設計」に委託した。結果は、15.7メートルと算定されたものの、当時の武藤栄原子力・立地副本部長は、土木学会に津波評価技術の研究を依頼し、その結果を数年先まで待つことになる。これは、勝俣恒久社長、武黒一郎副社長(いずれも当時)も了承していた。こうした「対策の先送り」の結果、3.11の大事故を招くこととなった。  しかし、内幕では、東京電力、地震本部、内閣府、原子力安全・保安院の間で、想像以上の様々なやりとりが行われていたことが島崎氏の著書で明らかにされている。
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