… … …(記事全文4,294文字)高市早苗首相の「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」という発言をめぐって、中国の苛烈な戦狼外交が続いている。戦狼外交とは要するに恫喝であり、ヤクザの言い掛かりと本質的に変わらない。
そもそも問題の発端は、大阪の中国総領事が「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」といった趣旨の、下品きわまりない脅迫的発言を行ったことにある。本来ならば、中国側が即座に非を認めて撤回・謝罪すべき案件だ。それにもかかわらず、中国は逆ギレのように「内政干渉は絶対に許さない」と声を荒げ、日本側を一方的に攻撃しているのである。
自分に明らかな落ち度があるときほど、論点をずらしながら攻撃のトーンを上げてくる――これが中国流のやり方であり、いまさら驚くには値しない。しかし、こうした戦狼外交を論破すること自体は難しくない。日本側が喧嘩の仕方、論争の組み立て方を理解していないだけだ。
高市批判派はしばしば、「安全保障においては曖昧にするのが基本中の基本なのに、高市首相はそれを理解していない」と主張する。実際、アメリカは台湾有事の際に軍事介入するか否かについて、いわゆる「戦略的曖昧さ」をとってきた。介入するかもしれないし、しないかもしれない――という不確実性そのものが抑止力になる、という発想である。
ここで注意すべきなのは、「安全保障政策の運用や具体的な対応シナリオを曖昧にしておくこと」と、「武力行使の前提となる法的要件まで曖昧にしておくこと」は、まったく別物だという点だ。前者には一定の合理性があるが、後者を曖昧にしてしまえば、政府も国民も何を基準に判断すればよいのか分からなくなる。存立危機事態の定義は、まさにその「法的な土台」の話であり、曖昧にしてよい領域ではない。
では、高市首相は何を問われ、どう答えたのか。
予算委員会において立憲民主党の岡田克也議員が投げた質問は、「台湾有事の際、どういう場合に集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』に当たるのか」であって、「中国が台湾に軍事侵攻してきたら、日本は自動的に戦うのか?」ではない。ここを意図的に、あるいは無意識に混同している論者が少なくない。
存立危機事態がいかなる場合を指すかは、

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