… … …(記事全文4,552文字)トランプが見せる笑顔には、明確な政治的サインが込められています。石破茂氏に向けられた、あの素っ気ない態度とは打って変わって、安倍晋三氏の後継を自認する高市早苗首相に対しては、会う前から柔和な表情を崩さない。国民も、同じアメリカ大統領が相手によって態度をここまで変えるのかと、直感的に感じ取ったはずです。しかし、その笑顔は単なる好意の表示ではありません。そこには、戦後レジームの最終処理とも言うべき「パラダイムシフト」への招待状が隠れているのです。
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トランプ来日――横田ではなく、羽田へ。意味はどこにあるのか
今回の来日で、トランプは横田基地ではなく羽田空港を選びました。日米安保条約と日米地位協定に従えば、アメリカ大統領は横田へ直接飛来できます。実際、そうすることが慣例化してきました。けれども、それは「日本は米軍の庇護下にある」という視覚的メッセージを世界に向けて発信する行為でもあります。羽田を選ぶという所作は、日本側への配慮であり、同時に「属国演出」からの距離の取り方を示唆しているように見えます。高市首相を正面から国家の代表として遇する――その象徴的な身振りとして、羽田到着は効果的だったと言えるでしょう。
そもそもトランプは、高市氏が自民党総裁に就く前から来日を示唆しつつ、最終決定を意図的に保留していました。相手が石破氏ならば会わない、という意思が透けて見える微妙な駆け引きです。結果として、高市政権発足後の来日というタイミングは、彼の政治的メッセージを最大化しました。安倍路線の継承者なら話が通じる――そうした期待が笑顔の奥に浮かび上がります。
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「笑顔の裏」にある二つの難題――しかも相互に矛盾する
しかし、ここからが現実です。トランプが携えてきたアジェンダは、日本にとって容易ならざる二本柱であり、しかも相互に矛盾しています。ひとつは「日本の軍事的自立」の要求。もうひとつは「日本をATMとして維持したい」という米側の資金需要です。どちらも彼の徹底したアメリカ・ファーストから導かれる合理的要請であり

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