… … …(記事全文3,751文字)維新との政策協議が前進し、高市政権の発足が現実味を帯びています。企業・団体献金の禁止を除けば、両者の政策はおおむね一致しており、停滞した政治に新風が吹き込まれる期待が高まっています。保守の再結集を待ち望んできた多くの国民にとって、これは朗報です。
しかし、その期待に水を差しかねない一点があります。憲法に「緊急事態条項」を新設するという、執念にも似たこだわりです。維新との合意事項にも含まれたと報じられていますが、なぜまず第九条の改正ではなく、緊急事態条項の先行なのか。ここに大きな疑問が残ります。
1.優先順位を取り違えてはいけない
本来、わたしたちが真っ先に取り組むべき憲法課題は、抑止力の回復と同盟の信頼性を確かなものにするための第九条の改正です。台湾海峡の緊張、インド太平洋の力の空白、宇宙・サイバー領域での日常化した攻撃——安全保障環境は「戦後最悪」と言われ続けています。それにもかかわらず、憲法改正の焦点を「緊急時の統治技術」へ矮小化することは、国家戦略の優先順位を取り違えることに直結します。
しかも、災害対応や一時的な権限の集中が必要だというのであれば、災害対策基本法、国民保護法制、各種の特措法による枠組みが既に整っています。まずはこれらを適切に整備・運用し、立法技術で不足を補うのが立憲主義の筋道です。
2.コロナ禍が突きつけた「緊急」の危うさ
コロナ禍は、国家が「緊急」を宣言し、人権を例外的に制約することの重さをまざまざと示しました。各国で統制と規制が過度に肥大化し、反対意見が抑圧された事例が相次いだのです。
カナダでは、過度な規制に抗議したコンボイ・デモの参加者や支援者に対して、金融口座の凍結まで含む強権的措置が発動され、

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