Foomii(フーミー)

日本復活・明日への羅針盤

山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)

山岡鉄秀

なぜ日本は自主防衛を諦めたのか─歴史の経緯を知らずして議論はできない

戦後80年が経過しました。この間、日本は一貫して地政学的にきわめて危険な場所に存在し続けてきました。北にはロシア(旧ソ連)、西には中国と北朝鮮。いずれも核保有国です。

しかも今、それらの国々が戦術核兵器を「使用を前提に」急ピッチで増産しているという情報が明らかになってきています。2024年に米国防総省が公表した報告によれば、中国は2030年までに1000発以上の核弾頭を保有すると見られており、ロシアも戦術核を中心に実戦配備を強化しているとのことです。

一方、ウクライナ戦争の長期化でアメリカの通常兵器の備蓄は逼迫し、同盟国に対して「自立した防衛努力」を求める機運が高まっています。いま、私たち日本が置かれている安全保障環境は、戦後最も危険で不安定な状況だと言っても過言ではありません。

「アメリカに守ってもらう」幻想の危うさ

明治維新から敗戦までの大日本帝国は77年間続きました。今の日本はそれを超えて80年。いまになって、ようやく「このままでは日本が危ないのではないか」という漠然とした危機感が国民の間に広がってきているように見えます。

しかし、肝心の国防政策は何も変わっていません。今も「日米安全保障条約」が前提であり、有事となれば米軍が来援し、自衛隊は補助的な役割を担うという体制です。

たしかに、安倍政権下で成立した安保法制により、限定的ながら集団的自衛権の行使が可能になりました。しかし、その適用も「米軍がすでに戦闘行動を開始していること」が前提であり、日本が単独で自国を守るという思想には立脚していません。

近年、米戦略国際問題研究所(CSIS)が公表した台湾有事シミュレーションにおいて、「日本は“米軍が来ない場合”を想定していない」とアメリカ側が批判したという報道もありました。実際、アメリカは核保有国との直接戦争を避けています。ウクライナ戦争がその典型です。兵器支援や情報支援はしても、自国兵を戦場に送り込みません。

仮に台湾有事が勃発したとして、米軍が本当に沖縄から出撃する保証はどこにもありません。むしろ、事前に家族を退避させる準備が進んでいるという情報すらあります。

習近平が政変で失脚し、台湾侵攻を否定する強硬派軍人が台頭する可能性もありますが、日本は常に「最悪のシナリオ」を想定し、防衛計画を立てるべきです。

「話し合いで解決を」という幻想

ようやく国内でも安全保障に関する議論が広がり始めました。しかし、相変わらず「軍備を持てば相手を刺激する」とか、「話し合いで解決を」という、非現実的なお花畑論が主流です。

今後も米軍に依存し続ける現状維持派と、アメリカの自国優先主義が進む今こそ日本が自主防衛に向けて転換すべきだとする現実主義派の間で、ようやく健全な議論の萌芽が見られるようになりました。

しかし、そもそもなぜ日本はここまで長い間、自国の防衛をアメリカ任せにしてきたのでしょうか?実はそこには単純ではない事情がありました。

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