… … …(記事全文2,642文字)去る5月29日、千葉県の麗澤大学において、創立90周年を記念する特別講義が開催されました。講師を務めたのは、米国ジョージタウン大学の政治思想史家ケビン・ドーク教授です。ドーク教授は、保守思想に根ざした「シカゴ学派」に属し、長年にわたり日本の保守思想や国体観を研究されてきました。戦後日本が失った「精神的支柱」の回復に対し、深い関心と警鐘を発し続けている人物です。
この日の講義で、ドーク教授が繰り返し訴えたのは、「現代日本は思考停止に陥っており、国家としての自覚を喪失している」ということでした。判断に迷う時こそ歴史に立ち返り、そこに真理を見出し、未来に活かす──それが教授の一貫した主張です。
特に指摘されたのは、日本社会が1960年代以降、快楽主義に傾斜し始めたという点です。これに対して講義後、ある麗澤大学の教授が反論しました。今年還暦を迎えるというこの教授は、「戦争には負けたが、経済で勝つ」という信念のもと、日本人は懸命に働いてきたと述べました。「24時間戦えますか?」という栄養ドリンクのCMを引用し、当時の猛烈な労働文化を引き合いに出して、快楽主義とは無縁だったと主張したのです。
確かに、1960年代から1980年代の日本は、世界が驚嘆する経済成長を遂げ、猛烈社員という言葉が生まれるほど、国民が仕事に邁進していた時代でした。過労死や「企業戦士」といった言葉もこの時代に定着しました。
しかし、私は長年ドーク教授の通訳を務めてきた立場として、その反論にこう答えました。
購読するとすべてのコメントが読み放題!
購読申込はこちら
購読中の方は、こちらからログイン