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昨日は昭和のワイドショーを賑わし、最近ではNHKBSの旅番組で人気を博していた俳優の火野正平さんの話題でもちきりだった。
火野さんの死去を報じるヤフーニュースのコメント欄を読んでいて典型的だったのは、自分が子どもの頃、火野さんの女性スキャンダルを知っても、なぜこの人がそんなにモテるのかが理解できなかったが、BSの「こころ旅」を見て納得した、そりゃモテるはずだ、誰にでも平等に優しく接し、愛嬌があって人なつっこい、嫌味のない色気がある、などというものである。
これは大いに納得できるのだが、中でも私がどきっとしたのは、「男に特有のプライドが一切表に出ないので人としてドアや敷居がまったくなく、出入り自由。ただし若い女性限定だが、女性全般にも優しい」というものだった。
プライドや顔、面子、虚勢を張る。
それらは男にとってなくてはならないもの、それなくしては男としてやっていけないくらいのものだからである。
カナダの進化生物学者であり、進化心理学者でもある、マーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソンは『人が人を殺すとき 進化でその謎を解く』(新思索社、長谷川真理子、寿一訳)の中で、男はただ生き延びるだけなら、リスクをほとんど冒さない、低リスクの戦略が有利だが、そういう戦略は何世代もたつうちに消滅してしまい、固定されない。
生き延びることに終始し、繁殖がおざなりになるからだ。
闘争して生き残ることは適応度を高める(自分の遺伝子をいかに残すかの)ための第1のステップだ。
よって死亡率のコストがかなり高いとしても、淘汰は相対的に危険な戦略に有利に作用する。
男は命をかけて闘争しないとそもそも繁殖の第1ステップにすら立てないと言っているのである。
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