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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

経済、安保、政治における現下の日本あらゆる問題の根幹に「敗戦のトラウマ」あり。それを超克する為にこそ是非、文学座談会『敗戦とトラウマ』をお読み下さい。

この度、表現者クライテリオン叢書から

 

『敗戦とトラウマ

 ~次こそ「正しく」戦えるか~』(浜崎洋介・編、ビジネス社)

https://www.amazon.co.jp/dp/4828427511/

 

が出版されました。ついては本日はこの書籍について解説さし上げたいと思います。

 

まず、今の日本では、過剰な緊縮財政に伴う超長期の経済低迷、対米従属外交や媚中外交等、外国人移民問題の加速等、あらゆる側面で様々な問題が深刻化しています。そんな事態になぜ日本が陥ってしまったのかと言えば、煎じ詰めて言えば、

 

「敗戦」による「トラウマ」

 

に、戦後80年が経過してもなお縛られ続けているからです。

 

「トラウマ」とは心的外傷、すなわち深い心の傷を一般に意味するものであり、長期にわたって深刻な諸問題をもたらし続けるものです。

 

もしそのトラウマが早期に克服できれば、各種問題は軽減され状況は改善されていくのですが、長期にわたって放置されれば各種問題がさらなる重層的問題を引き起こし、それらが複雑に絡み合って取り返しの付かない重篤な事態へと人々は引きずり込まれてしまうのです。

 

我が国日本はそんな心的外傷をかの「敗戦」によって負い、80年間もの長期にわたってそれを乗り越える努力をすることなく今日まできてしまいまったのです。

 

その結果、まっとうな国家運営が完全に遂行不能なおそるべき状況に遂に、立ち至ってしまいました。

 

その象徴こそ、虚偽の答弁を繰り返しつつ国益を一顧だにせず総理の椅子にしがみつき続ける現下の「石破茂」の姿です。

 

この最悪の事態を克服するには、「石破おろし」をまずは完遂することは必要不可欠ですが、もはやそれだけで我が国が救い出されることは不可能となっています。

 

日本の真の復活のためには「敗戦のトラウマの超克」が不可欠なのであり、したがって「敗戦のトラウマの超克」こそが戦後日本にとって何よりも大切な最大の政治課題なのです(したがって、次期総理はそれが可能な政治家こそが総裁・総裁に選ばれねばならないのです。石破や進次郎が総理総裁として“論外”である理由は、この一点だけに求めることが出来るでしょう)。

 

さて、この度、そんな戦後最大の政治課題に関わる書籍が、言論誌「表現者クライテリオン」の言論活動の一環として展開している「クライテリオン叢書」の一冊として出版されました。それが、

 

『敗戦とトラウマ

 ~次こそ「正しく」戦えるか~』(浜崎洋介・編、ビジネス社)

https://www.amazon.co.jp/dp/4828427511/

 

本書は、言論誌『表現者クライテリオン』に連載されていた文学座談会『対米従属文学論』の中で、とりわけ「敗戦のトラウマ」に関わるものを中心に収録しております。

 

この座談会は、表現者クライテリオン編集委員で文芸批評家の浜崎洋介氏に主導いただきつつ、当方や同編集委員の柴山桂太氏・川端雄一郎氏、そして執筆者の施光恒氏・小幡敏氏で執り行い、本書全体について文芸評論家の富岡幸一郎氏に解説いただいたものです。

 

例えば、吉田満『戦艦大和の最期』に描かれたかの大戦で戦った日本軍人達の精神が「敗戦」によって如何に「宙づり」にされたのか(島尾敏雄『出発は遂に訪れず』)、さらには戦後空間の中で如何に蔑ろにされ続けたかが三島由紀夫『英霊の聲』や城山三郎『大義の末』が描き出す小説空間の中で圧倒的な迫真性を伴う形で描出されます。

 

その筆舌に尽くしがたい理不尽は、戦後日本の数々の欺瞞が凝縮された舞台である「沖縄」においてさらに深く描出されます(大城立裕『カクテルパーティ』、目取真俊『平和通りと名付けられた街を歩いて』)。

 

我々座談会当義者達は、これらの数々の貴重な「体験録」に自らの精神を浸しつつ、その耐え難きを耐えることも忍びがたきを忍ぶことも到底できぬ凄まじき理不尽を追体験し、その上で、それが如何に巨大な「トラウマ」を我々の精神に残していくのかを体感していきます。

 

そしてその理解の下、その「敗戦のトラウマ」の手触りを語り合い、その深刻さを本書読者全員に語りかけます。

 

しかし、そんな「敗戦体験」に至る前の「戦争体験」そのものの中にも、戦後日本人が戦後言論空間の中で繰り返し取り上げてきた「日本軍の不条理」が確かに濃密に存在する事を確認する一方(丸山豊『月白の道』)、戦後日本人には及びも付かぬ「晴れがましさ」すら伴う雄々しさが国家の命運を分けた戦いの中にあったことも確認しました(櫻井忠温『肉弾』)。

 

こうした「戦争体験」、そしてその後に訪れる「敗戦体験」を善悪を超える形で追体験することは、我々が持つトラウマの全容を眺めうる視点をもたらす事になります。

 

そしてそのトラウマが故に、かの戦争は全て間違いであったと思い込むことにしてしまい、日本の産業、社会、そして精神の伝統的構造が全て否定されていった様を手触りあるかたちでありありと体感していくことが可能となります。

 

そしてその結果、米国仕立て、西洋仕立てのイデオロギーや仕組みをそのまま受け入れ、倫理と秩序を喪失し、その結果、現実を度外視した各種改革が進み、緊縮思想や資本主義やグローバリズムが様々な領域に流れ込み、それを通して冒頭に述べたような、社会、経済、政治上のあらゆる問題が噴出する状況に至ったというプロセスが、ありありと見て取れるようになります。

 

だから我々は、現下の様々な問題を克服するには、その根本にある敗戦のトラウマを超克し、自らの誇りと自信を取り戻さねばならないのです。さもなければ、我々は自分たちの国家の構造そのものを全て破壊し尽くし、これ以上国家を存続することも、ましてや戦うべき時に戦うことができぬ国家へと堕落し、滅び去る他ないのです。

 

そんなトラウマを超克するためには一体何が必要なのでしょう。

 

まず第一に言えるのは、「忘却」によっては、トラウマの超克は絶対にもたらされないという真実です。

 

トラウマは、そのトラウマをもたらした現実の過去に徹底的に直面し、繰り返し体験し、その体験を消化し、その体験が胚胎する「毒」を昇華させることができて始めて「超克」され得るものなのです。

 

だからこそ、本書『敗戦とトラウマ』は、そのトラウマをもたらした雄々しくかつ理不尽なかの「戦い」、屈辱的な「敗戦」、そして欺瞞に満ちた「戦後」の全てを、数々の作家達の筆の力を通して体験し、それを超克する契機を与えんとして改めて浜崎洋介氏によって編集されたのです。

 

一人でも多くの国民が、国民一人一人が知らず知らずの間に引き摺り続けている敗戦のトラウマを乗り越える契機に繋がりうる本書『敗戦とトラウマ』を読まれんことを、心から祈念いたしたいと思います。

https://www.amazon.co.jp/dp/4828427511/

 


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