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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

石破は今、自身の延命のために「解散」や「総総分離」を考えている。しかし、万一それらをやったとしても、総裁や総理を続けることはもはや「絶対無理」な状況にある。

今、9月8日の自民党の総裁選前倒しの意向調査という、事実上の「選挙」は、現時点で「前倒し」派が趨勢の模様です。

 

そんな中で、総理の座にしがみつきたい石破は、「一発逆転」のウルトラCとして「解散」カードをちらつかせはじめました。

 

噂では総裁選前倒しとなったら解散すると、電話までつかって周囲に漏らしはじめているとのこと。

 

現在の衆議院は、石破が解散すれば衆議院議員の職を失うことになり、再び復職するには選挙に勝たねばならないということになります。しかしもちろん、選挙で勝てる保証はなく、ましてや石破総裁率いる自民党で戦うなら、選挙に勝てないリスクはさらに拡大します。

 

だから、衆議院議員の中には、保身を考え、総裁選前倒しに賛成するのを躊躇する者がでてくることとなります。

 

石破はまさにそれを目当てに「解散するぞ」という脅しを党内の衆議院議員にかけているわけです。

 

実に卑劣な行為ですが、少なくとも法制度上は、石破総理に解散する権限があることは事実です。

 

しかし本来、総理に解散を決定する権限が付与されているのは、総理にそんな「保身」させるためではありません。

 

憲法7条に規定されている数少ない天皇の国事行為の中に「解散」があるということからして、よほどの国益上の公的理由、すなわち「大義」がある場合に限ってその権限が行使できるというのが、憲法の主旨です。

 

したがって今、石破が考えている解散は、憲法の精神を踏みにじるものであり、天皇の権威を冒涜するものであり、日本の法制度の抜け穴を使った卑劣な行為でしかないのです。

 

しかも、石破が解散を強行したとて、石破が総裁の座を失うことは避けられず、彼が総裁で居続けることは無理なのです。

 

なぜなら、総裁選はあくまでも自民党内のルールに基づいて決定されるものであって、衆議院が解散されようなどうなろうが、一旦「総裁選前倒し」が決定されれば、石破が自動的に「総裁」の座から追われることは確定するのです。

 

もちろん、総裁の座を追われても、しばらくは総理大臣で居続けることは可能です。

 

「議院内閣制」の理念からすれば絶対に許されるものではありませんが、現状の法制度上、自民党総裁でなくても、国会で「首班指名」が行われない限り総理大臣を変える必要はないからです。

 

通常は、自民党総裁の座を追われた瞬間に、自身が総理で居られるのは自民党総裁であるからだという基本的な筋を尊重し、総理を辞職する事になる筈ですが、石破にそんな常識が通じる筈もありません。

 

法制度の穴をついて、私利私欲、党利党略を追求する、という卑劣な「反社」の振る舞いそのものですが、石破という男はそういう男なのです。

 

一般にこういう総理と総裁が乖離する状況は「総総分離」と呼ばれるのですが、石破は実際に側近達とその可能性を検討しているとも言われています。

 

しかし、仮にそうなったとすれば、新しく誕生した自民党総裁が石破を除名することが可能ですし、自民党から内閣不信任を提出することも可能です。

 

そうなっても、ひょっとすると石破と事実上連携している野田立民が、その不信任案に「反対」すると言う可能性も考えられますが、流石にその不信任案に多くの野党は賛同するでしょうから、可決されるでしょう。

 

そうなったとき、素直に石破が辞任すればよいですが総理権限をつかって再び「解散」をすることになるでしょう。

 

もう滅茶苦茶な話ですが以上は決してあり得ない話ではありません。繰り返しますがもはや石破には、基本的なひととしての常識を期待することなど不可能だからです。

 

その姿はもはや、映画「ヒトラー 〜最期の12日間〜」に描かれた…

… … …(記事全文2,729文字)
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