… … …(記事全文5,261文字)本年3月に公表した,首都直下地震が1001兆円の総被害をもたらす,その一方で,20兆円規模の強靱化対策をおこなえば,その被害を4割減少させ,財政を約400兆円「健全化」さあせる効果を持つ,という土木学会の試算について,改めて紹介する原稿をまとめましたので,ご紹介さし上げます.
この記事は,専門誌に寄稿する記事ですので,少々記述が難しいかもしれませんが,最後の「おわりに」のところは,一般の方がご覧になってもよく分かる内容になっているかと思いますので,改めてここに掲載申し上げます.
「4.おわりに
以上の推計は内閣府が試算した試算被害をベースにしたものであるが,その想定は「1000年に一度」と言われる極度に大きな被害をもたらす「レベル2」相当のものではなく,それより発生確率が圧倒的に高い「レベル1」相当のものに過ぎない.しかも,最新のデータと研究知見を用いたが故に,今回試算は前回試算よりも「より確からしい結果」であることが想定される.そしてそうしたより現実的な試算により,1000兆円以上の国民的な被害と400兆円規模の財政的な被害が生ずることが,そしてそれと同時にその為の20兆円規模の政府投資が,その支出額を遙かに上回る7倍もの財政健全化効果をもたらすことが示された.
以上の結果は,政府による国土強靱化は国民の生命と財産,暮らしを守るだけでなく,国家財政を「健全化」する上で極めて重大な対策となっていることを示している.すなわちこれまで,強靱化を優先すべきか財政健全化を優先すべきかが「論争」となることがしばしばあったのだが,そうした「論争」がただ単に「ナンセンス」なものに過ぎぬことを本試算は示しているのである.繰り返すが,強靱化は国民の生命と財産と暮らしを「守る」だけでなく国家財政を「守る」ためにも必要なのである.
そうである以上,後は日本政府が,さらに言うなら政府の「財政当局」が,どれだけ理性的で合理的なのかが問われているということになろう.本試算が学術的に提示された今,それでもなお我が国が十分な強靱化ができないまま巨大被害をもたらす首都直下地震のXデーを迎えてしまったとするなら,それは,我々日本国民が誠に遺憾なことに単に「愚か極まりない存在」であったということの証明とならざるを得ない.
我が国政府が,そして我が国の財政当局が十分な強靱化を強力に推進できる程に十分に理知的で理性的であることを,心から祈念したい.」
…ってことで,これで強靱化できなければホント,財務省って,バ…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)