… … …(記事全文3,102文字)皆さんは,「金融・資産運用特区」なるものをご存じでしょうか?
政府・金融庁が,「資産運用立国実現プラン」なるものをつくり,この理念を実現するための「特区」をつくるということで各自治体対象に公募をかけたところ,この度,東京・大阪・福岡・北海道の4都市を「金融・資産運用特区」に指定することになったというものです.
曰く『政府は,個人の金融資産を投資に向かわせ、その資金によって企業が成長し、さらにその恩恵が個人に還元されるといった「成長と分配の好循環」の実現を目指している。資産運用の改革を通じてそうした資金の流れを加速させる、との考えに基づき、政府は2023年12月に「資産運用立国実現プラン」を取りまとめ、資産運用業の改革やアセットオーナーシップの改革などに着手した。
このうち、資産運用業の改革については、資産運用業への国内外からの新規参入を促し、それを通じて競争の促進に取り組むことが一つの柱となっている。
今回の「金融・資産運用特区」は、その主要施策の一つに位置付けられているものだ。岸田首相が昨年9月に米ニューヨークでその構想を表明したことから、国際公約的な位置づけともなっていた。』
…ということなんだそうです.
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/0606
これについて,とある方からメリットとデメリットは?というご質問を頂いたので,サクッと考えてみましょう.
まず,メリットというのは殆ど思い当たらないですが,しいていえば,短期的には日本企業が資金を得て,ビジネスを拡大できるということかと思います.
しかし,長期的に考えればデメリット以外を思い当たることができません.
例えば,「大阪における資産運用特区」というのは,「海外の金融関連企業などの進出を促す規制緩和が認められる特区」となる予定になっています.
そもそも金融関連企業が進出する,ということは,外資が,日本企業に「投資」しやすくする,というもの.
具体的には,日本企業への投資の主要部は「株式買収」です.外国勢の株式買収等の日本企業への投資には様々な規制が設けられているのですが,その規制が緩和されるということになります.
そして株式の購入とは,所謂、企業の買収です.
そもそも,外国資本が企業買収を始めとした日本企業への投資をするのは,そうすることで「儲かるから」です.儲からなければ,日本企業に投資などするはずがありません.
そして,株主は経営にさして口出しできませんでしたが,度重なる会社法等についての規制改革を通して,株主は経営に大きな影響力を持つと同時に,株主配当金はかつてとは比べものにならないくらいに拡大しています.つまり,今の日本では,株主が金儲けしやすくなっているわけです.
だから,外国企業が日本企業に投資・買収をする傾向が高まっているわけです.
しかし,それに対して様々な規制が賭けられているのは,外国企業による日本企業への投資や買収が「国益を毀損」するリスクがあるからです.
それは何かというと,第一に…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)