… … …(記事全文3,975文字)本日,鹿児島の川辺という小さな町で「在宅医療」を主としてクリニックを経営されている,医療ジャーナリストでもある森田洋之医師の在宅医療現場の視察に行って参りました.
森田先生の在宅医療は全て,「いろ葉」という介護施設の高齢者の方々の内,在宅医療による医師の診療が必要となった方々を対象としたものです.つまり,森田クリニックは介護施設である「いろ葉」と連携した「医療介護」施設として存立しているものとのこと.
今日は,そんな在宅医療の四件の現場(森田先生の一日の仕事量,です)に,図々しくも当方(「過剰医療」を当研究室の博士課程の学生として研究している医師と共に)、同行させていただきました.
そんな四件の現場の四人の患者さんは全員,90才前後の超高齢者.
一言で申し上げて,メッチャクチャに感激いたしました!
当方も,近親者に要介護者・入院中の高齢者が複数おり,介護現場,高齢者医療現場の事は生活者としてそれなりに存じ上げているのですが,そういう当方が関西で実体験として知っている現場とは,月とすっぽん程の差があったのです.
その様子は,本日の視察直後に森田先生と対談した下記動画でも報告しておりますが…
『藤井聡先生が診療現場見学に来た!の振り返りを先生と一緒に。』
https://www.youtube.com/watch?v=OezRD8tP1dE
何が違うって,90才以上のおばあちゃん達が,身体にはいろいろと病理を抱えておられる状況でありながら,「実に楽しそう」にしている,という点!
薩摩のくにに90年以上前に生まれた女性達が,90年以上,戦争も含めた悲喜交々の人生を経て辿り着いたその屈託のない笑顔は,まさに神々しいの一言.
経済学者やビジネスマンのアホどもは,そんな90以上の老婆等,何の生産性もない社会のお荷物のように思っているのかもしれませんが,あれだけ神々しければ,生きてくださっているだけで,こちらが有り難い気持ちになって参ります.
じゃぁ,そのおばあちゃん達,皆,90年間ずっと健康でやってきたのかというと,全くそうでは有りません.
健康である限り,森田先生が診療する必要など何ら無く,ただただ,介護施設の職員さん達が介護されているだけなのです.つまり,森田先生が在宅医療をしていると言う時点で,彼女たちは何らかの深刻な病理を抱えている方ばかりなのです.
例えば,ある高齢者の患者さんは他の病院で文字通り長い間「寝たきり」になっていたところ…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)