… … …(記事全文3,746文字)とあるメディアからの依頼で,国土強靱化について,とりわけ,それを行う事の合理性と,それを強力に進めようとしていない政府の「愚かさ」について,とりまとめました.
メルマガ読者の皆さんだけに,まずは,ご紹介さし上げます.ホンットに,国土強靱化を抜本加速しないということが如何に「オバカ」なものなのかということが,痛いほど分かると主追います…是非,ご一読下さい.
このままでは日本は巨大災害で滅び去る.国土強靱化を進める「理性」こそが今,政府に求められている.
京都大学 藤井聡
(1)日本を滅ぼす巨大自然災害の危機
本年(2024年)3月,土木学会は,首都直下地震や巨大高潮等の「国難」級の自然災害の被害想定の最新版を公表した.首都直下地震の(フロー被害とストック被害をあわせた)経済被害総額は1001兆円に上る.東京湾,伊勢湾,大阪湾の巨大高潮の経済被害総額はそれぞれ115兆円,126兆円,191兆円という結果が示された.
ちなみに,東日本大震災における被害総額は,74兆円になるとの推計値が公表されているが,この値を踏まえれば,三大都市圏における巨大高潮の被害は,あの1000年に一度の巨大地震津波の被害,原発事故まで含む深刻な被害を与えた被害を遙かに上回るものであると想定されているのである.首都直下地震について言うなら,その被害はあの東日本大震災の実に約14倍もの水準に達するであろうことが推計されたのである.
今回の土木学会の報告書には,南海トラフ地震の結果は報告されていないが,かつて報告された試算によれば,その被害は1400兆円を上回るものとなると示されている.これは東日本大震災の約20倍の水準だ.
このような災害がどれか一つでも発生すれば,今の日本国民の安寧ある暮らしが完全に破壊され,将来の日本国民は今では想像できないほどの貧困や衰退と混乱の中を生きていかねばならなくなる.しかも,これらの自然災害が「連発」するリスクも当然のように存在している.これを考えれば,今,日本国家はそれらの巨大自然災害に対する対策を徹底的に進めなければならないのであり,それこそが,日本政府が今,全力で取り組まねばならないものであることもまた,明白なのである.
2024年3月に公表された巨大自然災害の被害総額に関する報告書
(2)国土強靱化で,被害を大幅に軽減できる
そうした認識から,今,学会が提案し,そして政府与党もその取り組みを進めんとしているのが「国土強靱化」とよばれる国家プロジェクトだ.
これは,地震について言うなら…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)