… … …(記事全文4,721文字)本年3月、北陸新幹線が福井県の「敦賀」まで接続され、東京と敦賀が新幹線で行き来できるようになりました。
そしてこの敦賀接続を受けて、敦賀から大阪・京都に向けて整備を急ぎ、北陸新幹線を「完了」させることが重要だ、という議論が盛り上がってきています。
北陸新幹線を敦賀と新大阪をどのように繋ぐかについては、自由民主党と公明党の与党が設置した「与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム」(いわゆる「与党PT」)が検討を行い、下の図にある小浜ルート、湖西ルート、米原ルートの3つの案を学識経験者や中央政府の技術者達のサポートを受けながら様々な技術的側面を検討し、2016年に小浜ルートを採用することが決定されました。
この決定を受けて、政府は具体的な建設に向けた準備を開始し、国土交通省が建設主体として指名している鉄道・運輸機構が、環境影響評価法に基づく計画段階環境配慮書を2019年に公表する等、具体的手続きが進められているところです。
こうした経緯の中、敦賀までの北陸新幹線が完成した事を受け、与党・政府で正式に決定し、国交省の調査も既に開始されている小浜ルートの建設の準備を急ピッチで進めなければならない状況にまさに今、立ち至っているのですが…昨今のニュースでしばしば取り上げられるようになったのが、「米原ルート」で北陸新幹線を作るべきだという「声」が一部から起こっているというお話し。
京都ルートでは建設費も建設時間もかかる一方、米原ルートは(地図に示したとおり)、建設する延長が短く、簡単に北陸新幹線が完成するじゃないか、ということから、政治的には採択されなかった米原ルートを再度「復活」して検討を始めればいいではないかという声が一部にでている、という次第です。
勿論、米原ルートは建設費が政治的に決定された小浜ルートよりも安価であることは事実ではありますが、どちらが国益に資するのかと言う点で考えれば、小浜ルートが米原ルートを圧倒的に凌駕しているのです。だからこそ、与党PTでの検討を通して、建設費が安い米原ルートが採択されず、建設費が相対的に高い小浜ルートが選択されたのです。
では、小浜ルートにどのようなメリットがあるのか、逆に言うと今、一部において主張されている米原ルートにはどのような本質的問題があるのか、という点について、以下にご紹介いたします。
■■米原ルートは「乗り換え」が必要■■
まず、最大の米原ルートの問題は、米原での「乗り換え」が必須となってしまうという点です。
乗り換えが必須であるのは、東海道新幹線と北陸新幹線は信号システムが異なることから、技術的に乗り入れが不可能だからです。
で、乗り換えがあれば、何よりまず、乗り換え無しのルートよりも移動時間それ自体が圧倒的に伸びてしまう事になります。
さらには、従来の交通行動分析の研究から、一回の乗り換えは(仮にトータルの所要時間が全く同じであったとしても)所要時間が30分延びてしまうことと同程度の「心理的抵抗感」をもたらすことが知られています。
これらのことは、東京―京都・大阪間の北陸新幹線のアクセス性が、時間的にも心理的にも米原ルートは小浜・京都ルートよりも圧倒的に低いものとなることを意味しています。
■■米原ルートの経済効果は圧倒的に低い■■
そして、東京―京都・大阪間の北陸新幹線のアクセス性が小浜ルートにおいて劣るということはつまり…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)