… … …(記事全文4,147文字)岸田首相は11日午前 日本時間12日未名アメリカ議会の上下両院合同会議で演説しました。今朝のチャンネル桜のフロントジャパンというネット番組にて、昨日の岸田首相の米国議会での演説が、如何に酷いものであったのかを解説いたしました。
ついてはここでは、そこでお話しした内容を改めて、文字起こしし、抜粋、編集した記事の「後半」をご紹介します。
- Youtubeは、コチラをご参照くださいhttps://youtu.be/4KP1QKoQqiU?t=1197
――――――――
…で、次の酷い言葉がこれです。在日米軍について彼は、「日本のために拡大している軍事的抑止力」と表現してるんです。これは和訳ですが、英語で「U.S. extended deterrence for Japan.」といっている。
「U.S. extended deterrence」というのが「米国の拡張抑止力」という意味です。で、抑止力というのは、あっさりいって、軍隊、という意味です。
つまりこの言葉は、「米国の拡張抑止力for Japan」という意味。
で、ここで問題なのが「for」です。
これはどう考えても、「ために」と訳す他はない。
ですが、僕だったら、「米国の拡張抑止力for Japan」ではなく、「米国の拡張抑止力in Japan」あるいは「米国の拡張抑止力into Japan」という英語を使います。これなら、「日本における」米国の拡張抑止力、つまり、在日米軍、という事になります。で、その在日米軍が存在する目的については言及為ない。ただただ、日本に存在する米軍だ、というだけの意味になります。
しかし、「米国の拡張抑止力for Japan」と「for」をつかうと、日本を守る「ための」軍隊だ、という事になるわけです。
これは極めて問題のある発言です。
ちなみにこの部分、日経新聞ではなんと訳してるのかというと…
「米国の日本への拡大抑止」
と訳してます。ハッキリ言って、何言ってるか分かんない日本語ですね。
「抑止」なんて意味不明だし、「拡大抑止」に至ってはもっと意味不明。
「日本への拡大抑止」って、一体何言ってるのかさらに分かりません。
つまり、この翻訳者は、「日本のための在日米軍」っていうことを総理が言ったってことを意図的か無意識的かは分かりませんが、隠蔽しようとして、こういう意味不明な和訳をつかったわけです。
じゃ、本来なら在日米軍をどう表現するかと言えば、一応タテマエとして、
- 米国の国益のために、極東に軍隊を配置したいと考え、日本にその旨を提案した、
- その提案を、日本が吟味し、日本の主権をもってして受け入れ
- つまり、日米双方の国益の視点から在日米軍の存在が合意されている
という事を前提とした発言にします。
だから、絶対に「米国の拡張抑止力for Japan」ではなく、「米国の拡張抑止力in Japan」と言う言葉を使います。
しかも実際には、そのextended deterrence は「against Japan」という側面もあるんです!つまり、二重統治論と言いますが、在日米軍は、中ソ朝に対する抑止力として日本に(in Japan)存在しているという側面があると同時に、日本の再軍国主義化を抑止するためのものとして(against Japan)も存在しているんです!
つまり、そのextended deterrenceはin Japan、つまり「日本に」存在しているのは存在していますが、その目的は徹頭徹尾、for USA、つまり「米国のため」に存在しているのであって、決してfor Japan、「日本のため」に存在いているのではないのです!
もちろん、米会議で米国にケンカを売る必要はありませんが、以上の認識をもって演説しなきゃいかんのです。日本の総理は。
ところが、あっさりと、在日米軍は日本のためにあるんだ、なんていう言葉をあっさりと米国議会で岸田さんは言っちゃったわけです。
僕がアメリカ人なら…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)