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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

【物流が止まる!?】2024年問題をどう乗り越えるか? ~その問題構造と3つの処方箋~(後半)

日本のトラック物流最大の課題:「下請け」に対する不当取引と、それを放置する新自由主義・自民党

以上(前半の議論)を簡潔にまとめると以下の様になります。

 

2024年問題を乗り越えるためには、以下の三点が必要だという事になります。すなわち、1)物流効率性を高めて一ドライバーあたりの輸送力を増大させると同時に、2)荷主が適正価格を支払って貰うことを通してドライバーの賃上げを実現させ、ドライバーを増やし、抜本的に輸送力を拡大していくことが重要です。それと同時に、3)現状のトラック市場で横行している、荷主達による「過剰サービス」の要求を緩和していくことで、トラック需要そのものを縮小させていくわけです。

そして、この三点を実現するために、発荷主、着荷主、トラック事業者の三者が「協力」していくことが求められているのです。そして、この三者の協力を実現させるために、民間においてはトラック協会や経団連等の財界組織の協力と、国交省と経産省を中心とした政府が様々な「規制適正化」(必要な規制強化・導入を含む)が必要なのです。

ただし、こうした三者間の「協力状況」の創出は、必ずしも容易ではありません。

なぜなら、この三者は完全に「フラット」な力関係にあるのではなく、「発注者・受注者」という上下関係が存在しているからです。つまり、(発・着あわせた)「荷主」が発注者であり、「トラック事業者」が受注者であるため、トラック事業者の方が、発注者よりも立場が「弱い」という状況にあるのです。

その結果、より強い立場にある荷主達は、適正価格を支払わず、過剰サービスを押しつけようとするのであり、より弱い立場にある事業者達は、そうした「不当」な荷主の要求を、唯々諾々と受け入れているという構図が存在しているのです。もしも受注者のトラック事業者が「そんな過剰サービス無理です」「そんな安い価格でははこべません」と言えば、発注者は「じゃぁお前のサービスは買わない。別のトラック会社にする」と言うことができるのです。こういわれれば、「それなら仕方が無い、その価格でその過剰サービスをお引き受けしましょう」と折れてしまうトラック事業者が必ずでてくるのです。

この荷主・事業者間の力関係を改善しない限り、2024年問題は抜本的に改善することが不可能となってしまいます。

では、この力関係を改善するには何が必要なのでしょうか?

言うまでも無くそこで重要となるのが、政府の規制です。

政府がそういう不当な商取引を国交省、経産省の立場から厳しく取り締まり、違反した荷主を罰するような制度ができれば、2024年問題は一瞬で解消する事になります。

しかし、新自由主義が蔓延った現代日本、とりわけ、新自由主義の信奉者が多数を占める現在の自由民主党を中心とした政府において、こうした協力な規制が導入されることは万に一つも無い、というのが実情です。

しかし、政府にも心ある勢力があれば、それに準ずる規制強化は幾分可能となるでしょう。

例えば国交省においては、これまで、1)国交省としての標準価格を導入し、これに基づいて価格交渉をするように荷主・トラック事業者の双方に対して指導する、2)そうした交渉を行わない悪質な荷主の名前を公表する、3)(協力的に振る舞わずに利己的に振る舞う)悪質なトラック事業者の許認可を停止する、というような取組を法律を制定することで進めてきました(当方は当該法律を制定する際に、関係各位との勉強会の座長を務め、その制度設計に協力さしあげました)。

一方で、経産省は上記の国交省の取組を荷主サイドからサポートする、という取組があります。

そして、物流事業者や荷主達は、以上の国交省や経産省の指導に対して協力的に振る舞っていくことが必要です。

もちろん、以上の取組は、強力な規制に比べれば極めて「ぬるい」ものでしかありません。しかし、何もないよりはマシ、とは言えるでしょう。

 

 

安易な処方箋:外国人ドライバーの引き受け、が導く「地獄」の未来

とはいえ、現時点の最大の問題は、以上に述べた、「2024年問題の処方箋」が実現できないこと、に他なりません。そして、その最大の障害が…

… … …(記事全文3,511文字)
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