… … …(記事全文4,125文字)皆様は物流の2024年問題はご存じでしょうか?
労働規制が2024年度から物流業界に導入され、これまで許されてきた「残業」は「長時間運転」が禁止されてしまうという問題です。その結果、トラックで運べていたモノがもう運べなくなってしまい、その結果、日本経済が停滞し、大きな経済被害が生じてしまう…という問題です。
この問題については当方、国交省の運輸行政の立場から、長年様々に関わってきましたが、この度、この問題についての取材を受けましたので、その対応ということでまずは文書でその「構造」と「処方箋」を包括的にまとめましたので、以下に3回にわたって公開します。
是非、ご参照ください。
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まず、「物流」というものは、「発荷主、トラック事業者、着荷主」の三者の行動・意思決定に規定されます。つまり、物流現象というのは、この三者が織りなす「協力現象」であり、さらに言うなら「社会現象」なのです。
したがって、特定の主体だけがどれだけ努力しても、全体の状況は抜本的に改善することはありません。三者の協力(cooperation)が、その抜本的状況改善には必須なのです(それはサッカーチームの強さは、全員の協力にあるのであり、特定のプレーヤーがどれだけ世界最凶でも、他のメンバーにやる気がなければチームとしてはすこぶる弱い、ということになるのと全く同じ話です)。
そして今、この三者の内、トラック事業者に法的規制が加わり、これまでのトラックサービス提供量が大きく制限され、それに伴って、発荷主・着荷主の産業経済活動が抑制され、経済的被害が生ずるリスクが生じているわけです。これが、2024年問題だという事になるわけです。
こうした前提を考えると、この2024年問題を乗り越えるには、発荷主、トラック事業者、着荷主の三者のより一層の協力的行動が必要であり、この三者が織りなす協力現象・社会現象に関わる「2024年問題経済被害」が、最小になるように「最適化」されねばなりません。
その「最適解」は、発荷主、着荷主が全く協力せずに、ただトラック事業者だけが努力した場合には絶対に到達できません。
つまり、トラック事業者だけが努力した場合に、緩和される「2024年問題経済被害」量は、極めて限定的なのです。一方で、トラック事業者に加えて発荷主、着荷主が協力した時には、「2024年問題経済被害」量は、抜本的に縮小する事になります。それどころか、これまで発荷主、着荷主が協力してこなかった状況を考えれば、この三者の協力状況がこの2024年問題を契機に創出されるなら、かえって物流の効率性が「向上」し、物流供給量が(働き方改革以前よりもさらに)「増える」ということすら考えられるでしょう。
そうした理想的状況をつくるために、各主体はどのような「協力行動」(cooperative behavior)をすれば良いのでしょうか?
方法1:トラック業界内部の「協調」の促進による供給力拡大
まずトラック事業者は、より効率的に、輸送する最善の努力を図ることが必要です。
第一に必要なのは…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)