… … …(記事全文3,459文字)みなさん、またまた日記の配信が滞ってしまいましたが…ここ数日、クライテリオンの締め切り作業と、とある学会の委員会で、年度末に向けて南海トラフ地震や巨大高潮などの強靱化対策によって、どれくらいの効果があるのかを計算する作業に忙殺されてしまっておりました。
特にシミュレーションの計算を自身で進めてみたのは、数年ぶりで、なかなか日記のお時間がとれず、大変失礼しておりました。
折角ですので、現時点で公表可能な範囲で、今回の学会での計算で明らかになった、巨大災害の「恐るべき実態」について、簡単に解説さし上げたいと思います。
今回の学会の検討は、下記の小委員会の検討です。
「国土強靱化定量的脆弱性評価委員会」
https://jsce-ip.org/about/%E5%B0%8F%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E6%B4%BB%E5%8B%95/%E5%9B%BD%E5%9C%9F%E5%BC%B7%E9%9D%B1%E5%8C%96%E5%AE%9A%E9%87%8F%E7%9A%84%E8%84%86%E5%BC%B1%E6%80%A7%E8%A9%95%E4%BE%A1%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A/
この委員会は、南海トラフ地震や首都直下地震、三大港湾の巨大高潮、そして、日本各地の洪水が生じたときに、どれくらいの被害が生ずるのかを、政府が公表している数値に基づいて推計する、というもので、かつて、2018年に土木学会で行った計算さんの、アップデート版のものです。
https://committees.jsce.or.jp/chair/system/files/%E6%9C%AC%E7%B7%A8_%E3%80%8C%E5%9B%BD%E9%9B%A3%E3%80%8D%E3%82%92%E3%82%82%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%99%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%8A%80%E8%A1%93%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_6.pdf
今回の特徴は、前回と違い、東日本大震災の被害の構造が、その発災から10年が経過しているということで、明らかになっていることから、その知見を全面的に活用するという点にあります。
そして、とりわけ今回、各災害の人的被害や経済被害だけでなく、財務省が後生大切にしている「プライマリーバランス毀損被害」、つまり「災害による財政悪化」をしっかりと計量評価する点が、大きな特徴になっています(実は今週末、その計算をずっとシコシコとでやっていたのでありますw)
計算結果は改めてご紹介したいと思いますが、これまで公表されている数値だけご紹介しますと、例えば東日本大震災では、経済被害(つまり、被災地の方々等の所得の縮小額の累計値)として「63.8兆円」という数値が推計されています。
一方で、資産の被害(要するに、家屋はビルや道路等が破壊された被害総額)が、10.7兆円となっています。
そして、政府における復興費が「27.3兆円」となっています。
以上纏めて言うと、被害が(資産と経済あわせて)74.5兆円に対して、復興費が27.3兆円となっているのです。
今回、巨大災害が将来起こった時の復興費がどれくらいになるかを推計するにあたって、この金額を活用することを考えているのですが、この結果は、総被害額74.5兆円の37%の27.3兆円が復興費となっているということなわけですが、この「37%」という比率が将来の大災害時の復興費の目安となると考えたわけです。
被害が大きければ大きいほど、当然、復興費が大きくなりますから、こうした考え方も、それほど無理がないだろうと考えたわけです。
ちなみに、阪神淡路大震災の時の比率も、概ねこの水準であったことがしめされています。
さて、2018年の土木学会の報告では、首都直下地震の被害総額が約800兆円、南海トラフ地震の被害総額は約1400兆円となっていますから、上記の37%という数字を用いると、首都直下地震の復興費は約300兆円、南海トラフ地震は約550兆円というトンデモない数字になります。
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)