… … …(記事全文2,791文字)『「過剰医療」の構造」』を表現者クライテリオンで特集したところ、様々な反響を頂きました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKBSHQC7
賛同する声が数多くある一方で、医師の皆さんからの、反論・反発も複数耳に届いています。
そんな中でもよくある反論が「医師の大半は真面目な人々だ。医師批判は是認できない!」というもの。
こうした反論は、一般の方々から頂くこともありますが、やはり、医師の皆さんから頂くことがあります。おそらく、これが医師の皆さんの平均的なご意見なのだと、思います。
筆者も勿論「多くの医師が真面目に患者の健康を願っている。決してカネの亡者なんかじゃ無い!不当な批判だ!!」という意見に賛同いたします。
しかし、仮に多くの医師が真面目に患者の健康を「主観的」に願っているとしても、現代日本の平均的な医師には、今まで多くの言論人達に看過されてきた、深刻な問題があるのです。
この点について、現在とりまとめている、新しい書籍『過剰医療の構造』の中で、(典型的反論に対する再反論の一部として)記述いたしましたので、ご紹介差し上げます。
是非、ご一読下さい。
…
反論3「医師の大半は真面目な人々だ。医師批判は是認できない!」への反論
これもよく耳にする反論である。確かに、筆者の知り合いの医師達の多くが真面目な医師達であり、皆が皆、患者を地獄に落として一円でも多く金儲けをしてやろうという悪意の塊のような人物である、というわけではない。
しかし残念ながら、そういう「悪意の塊」のような病院経営者や薬局経営者、介護施設経営者が存在することは、特定の固有名詞の下、間接的に耳にすることは実に多い。
さらには、仮に「患者の健康を害して金儲けのために過剰な医療をしてやろう」という明確な意図が無かったとしても、病院が組織として採択している入院病棟の「満床を目指す」という方針に組織人として真面目に従っている医師は実に多い。
先に紹介した筆者等が行ったアンケート調査でも、患者の健康を度外視して、兎に角ベッドが空いているなら可能な限り満員にさせていこうとする意図が存在する病院に少なくと6割以上もの医師が勤務しているのという実態がある。言うまでも無くそうした医師の実に多くが実際に、そうした医療判断を行っていることは確実だ。
そうである以上、悪意無く真面目に勤務する医師達の責任は皆無なのだ、とは、残念ながら言えないのである。
こうした問題を哲学的に考察し、そうした「組織人」の責任は決して免責し得ないのだという結論を導き出した事例として有名なのが、哲学者ハンナ・アーレントの『エルサレムのアイヒマン』だ。
アイヒマンとは、第二次大戦期のナチス・ドイツの高級官僚であり、ユダヤ人ホロコーストの中心的施設であったアウシュビッツ等へのユダヤ人輸送行政の責任者であった人物だ…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)