… … …(記事全文2,970文字)今日は、当方の出身地である奈良県の某基礎自治体のとある講演会に行って参りました。
そこで、地元の人達にあれこれ話しを伺い、今奈良県が、酷い事になっている…ということを、改めて知りました。
先日の奈良県知事選挙で、当方の生まれ故郷である奈良県生駒市の市長を務めていた、山下真氏が日本維新の会公認で出馬し、勝利を収め、今、奈良県知事を務めているのですが、彼が、これまで奈良県で検討されてきた数々の「大型事業」を全て「ストップ」しているとのこと。
https://mainichi.jp/articles/20230502/k00/00m/010/321000c
もちろん、無駄な事業だったらストップすりゃぁそれでいいのですが、お話し伺っていますと無駄かどうかをさして吟味せずに、「とりあえずストップする」という大変に理不尽な事になっており、それで地元に大きな混乱が生じているようなのです。
本日、当方が耳にした、彼がストップしてしまった事業は、ちょうど上記記事にも記載されている以下の三つ。
・大学誘致
・スポーツ施設建設
・防災拠点としての飛行場建設
これらはいずれも、様々な議論を経て、検討をかさねられ、かなりの「熟度」にまでこぎ着けているプロジェクトだったそうです。
しかしそれにも関わらず、上記記事にも書かれているとおり、山下氏はこれらの事業をいずれも「不要」だと主張しておられる様子なのです。
当方、現地をあれこれを拝見しましたが、少なくとも大学誘致は、奈良県の活性化に大変に効果的な事業である可能性は十分にあると感じました。
奈良県には理工系の大学機関がないのですが、今は文系の学部しかない奈良県立大学に理系の初めて学部を創出し、それを奈良県内某所に設置することを検討していたそうです。
これに対して山下氏は、
・どれだけ入学するか分からない。
・就職先があるかどうかも分からない。
ということで、中止を主張しているようです。
が、「学生需要や就職先がない」と断定することも「ある」と断定することもできないのなら、しっかりを検討をして、ある見込みが高いならやればいいし、ない見込みが高いなら、中止すればよい、というだけの話です。
で、話を伺うと、付属高校もあるそうですから、そこからの需要は一定見込めることは間違いないようです。また、奈良県内に理系の大学が無かったということから、奈良県民の理系高校生の進学先として一定の期待が持てるようです。
だから、それが「ない」と断定することはできなさそうです。
就職先についても、奈良県内には「高専」があり、理系の学生の一定の就職先があったわけですから、これも「ない」と断定することは言えなさそうです。
一方で、メリットについては、大学が誘致できれば、教員、学生が通勤通学しますし、それらの一定数が周辺に居住する事になりますから、需要増、人口増を通した経済効果があることは確実です。しかも、大学の整備費用は、全て基礎自治体が出すわけでも無く、県も国も補助しますから、地元には大きな効果があります。
これらのメリットがあるにも関わらず「需要がないかも知れないから」というだけで辞めてしまうのは、あまりにももったいない話だと感じました。
空港についても、当該エリアには空港がなく、南海トラフ地震が起こったときの物資輸送等が大きく滞ることが危惧されており、それに対処するために防災空港という趣旨で検討が進められてきたそうです。それにも関わらず、それを無駄だと断定する根拠は薄いように思われます。
…ということで、詳しくは各事例さらに詳しく調べる必要がありますが、こういう風景はこれまで何度も繰り返されてきたものですね。
八ッ場ダムを止めた民主党・鳩山由紀夫。彼らはそれで国民人気を得た…でも、やっぱり必要だから再開したっていう話。
川辺川ダムについてもまた、民主党・鳩山由紀夫が止めて、それで国民人気を得た。で、今でも凍結されたままですが、それが無かったせいで、球磨川が決壊し多くの命が失われ…今また再開する議論が始められている、という話。
豊洲市場だって移転中止、って言って、小池は国民人気をかっさらっていきました。ですが、やっぱ、よくよく考えたら豊洲がいいってことになって、移転した。そのせいで、移転がおくれてもの凄い損失がでた…
今回の山下氏のやり口は、こうした民主党や小池のやり口と全く同じ。さらに言うなら、道路事業をたたいて知事になった猪瀬直樹や、ダム事業を「脱ダム宣言だ」なぞといって、たたいて人気を得て、長野県知事を続けていた田中康夫のやり口とも同じですね。
これらは要するにすべて、以下の3ステップを踏襲する、という点で全く同じ構図があります…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)