━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「植草一秀の『知られざる真実』」 2012/08/17 領土問題を武力紛争にしないための知恵 第319号 ──────────────────────────────────── オリンピックが終わるのを待ったかのようにテレビを占拠している尖閣、竹島 問題。 国民の最終判断を待たなければ最終決定できない消費増税問題をこれから本格 的に国民的論議にしなければならない局面で、これらの問題が情報空間を占拠 している。 野田佳彦氏は「我が国の法令に準拠して厳正に対処する」と述べながら、不法 入国として逮捕、拘留した活動家をそのまま強制送還する方針である。 すべてが「茶番」、広い意味の「やらせ」である。 外国と領土をめぐって摩擦が生じたとき、「対立」の方向に事態を推移させれ ば、国内の「ナショナリズム」には簡単に火がつく。 国内の重要問題は消し去られ、威勢のより「対立」の主張が喝采を浴びる。 こうしたことを計算し尽くしたうえで、一連の「茶番」が演じられている。 登場人物はすべて広い意味の「役者」であると思われる。 こうしたなかで、元外務省国際情報局長の孫崎亨氏が冷静な対応を呼びかけて 異彩を放っている。 折しも孫崎氏が執筆された『戦後史の正体』(創元社)がベストセラーになり、 日本外交の本質が少しずつ主権者国民に知られ始めている。 孫崎氏は本書の前に、『日本の国境問題』(ちくま新書)、『不愉快な現実』(講 談社現代新書)を出版されている。 テレビや新聞は尖閣、竹島が日本固有の領土であることを明言し、国民のナシ ョナリズムと他国との対立の感情を煽り立てているが、孫崎氏はこれらの問題 を客観的に捉え、問題の建設的な解決の道を模索する姿勢を示されている。 これらの問題を建設的に解決するために、すべての国民が孫崎氏の主張に耳を 傾ける必要がある。 何よりもまず、孫崎氏の著書『不愉快な現実』第9章「日本の生きる道-平和 的手段の模索」をご購読賜りたい。 孫崎氏は、… … …(記事全文4,916文字)