□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年8月11日第616号 ■ ============================================================ お言葉の成立過程を公開することは究極の情報公開である ============================================================ 8月8日に公表された天皇陛下のお言葉は、一体どういう経過をへて完成したものだろうか。 私がそう問いかけるのは、もちろんあのお言葉が天皇陛下一人によって作成されたものではないと、誰もがそう考えるからだ。 誰が原案を書き、それに対し天皇陛下がどのような意見を述べられ、また安倍内閣がどのタイミングで原案を読み、それに対してどのような意見を伝えたのか、伝えなかったのか。 それらを正しく知る事は、天皇陛下が国民統合の象徴である以上、国民の責務であり権利だ。 しかし、国民はまったく知らされていない。 お言葉の成立過程が、天皇陛下と宮内庁、官邸のみで厳しく共有されるのならまだ理解できる。 ところが、メディアもまたそれを知っているとしたらどうか。 きのう8月10日に、読売新聞が「象徴天皇 お言葉の背景」で書いていた。 天皇陛下がお言葉を発表する前日、首相官邸の関係者は、宮内庁から届いた最終稿の「お言葉」のある一文に目を止めたと。 「次第に進む身体の衰え」の前に、「幸いに健康であるとはもうせ」と、2日前の文案に無かった言葉が加筆されていたと。 その一文から、この関係者は、「摂政は望まない」という陛下の強い意志を感じ取ったというと。 こんな裏話を読売新聞が書けるということは、関係者がそれを読売新聞に教えたということだ。 読売新聞のその記事は、また、こうも書いている。 官邸側は退位ではなく、摂政を置くことを対応する選択肢も想定してきたが、加筆を見た関係者は、「これで摂政を前提とした検討はできなくなった」と感じ、退位を前提にした法整備しかないと覚悟を決めた、と。 お言葉の表明は当初、昨年12月の天皇陛下の誕生記者会見のタイミングで検討されたが、調整がつかなかった、と。 調整がつかなかったとはどういうことか。 もちろん官邸が待ったをかけたのだ。 この読売新聞の記事が図らずも教えてくれたことは、天皇陛下の生前退位は、NHKのスクープ報道で突然起きた問題ではなく、天皇陛下やその意向を受けた宮内庁と安倍官邸の間で、かなり前から話し合いが行われていた問題であるということだ。 もっとはっきり言えば、ご高齢を理由に天皇陛下の役割を限りなく縮小しようとする安倍官邸側と、それに抵抗する天皇陛下の間の激しいせめぎ合いがあったということだ。 そして、そのことを、少なくとも読売新聞の記者は関係者から聞かされて知っていたのだ。 知らされていなかったのは国民だけだったということだ。 これほど国民を馬鹿にした話はない。 これほど、メディアが国民を裏切って、政府側についてきた事を証明する事はない。 たまりかねた宮内庁の天皇側近の一人がNHKの担当者を通じて国民に知らせようとしたのではないか。 我々は官邸と宮内庁に、今度のお言葉の成立過程を、メディアが流す憶測やエピソードではなく、その一部始終を公開するよう要求しなければいけない。 情報公開法が成立して久しいが、原則としてすべてが公開されるはずの情報公開法が、現実には原則非公開のごとく運用されてきた。 しかし、このお言葉の成立過程は公開されなければいけない。 政府と宮内庁にとって最も極秘であるはずのお言葉の成立過程こそ、国民が等しく知るべき情報である。 繰り返し強調したい。 天皇陛下のお言葉の成立過程を明らかにすることは究極の情報公開である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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