□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年9月17日第765号 ■ ============================================================= 「9条削除で真の安保論争を」と唱える法哲学者井上達夫教授 ============================================================== きのう9月16日の東京新聞「こちら特報部」が、法哲学者井上達夫東大教授の「筋論」を掲載していた。 そこに書かれている井上達夫教授の「筋論」は一言で言えばこうだ。 対米従属で安保法案成立を強行する安倍首相はもちろん幼稚で愚かだが、安保政策をどうするかという事を一切議論しない原理主義的護憲者も欺瞞だ。自衛隊と安保条約を廃棄しようと努力しない原理主義的護憲派は、解釈改憲で自衛隊を容認する修正主義的護憲派と同じように欺瞞だ、と。 なぜ私がこの記事に注目したのか。 それは井上教授の考えが、憲法9条を守るだけの消極的平和主義では安倍首相の改憲論には勝てない、日米軍事同盟から自立した日本の安全保障政策を提示しなければいけない、という私の考えと共通するところがあるからである。 井上教授は、私と同様に、護憲論者の多くから反論されているに違いない。 いまや護憲論者の唯一のお気に入り新聞のような東京新聞が、このような意見を掲載したことは驚きだ。 しかし、私と井上教授の間でさえ、大きな意見の違いがある。 井上氏は欺瞞から抜け出すためには憲法から9条をなくせという。 民主的なプロセスで自分を守ることが望み薄な被差別少数者の人権は憲法で守る必要があるが、しかし、安保政策は、通常の民主主義的立法プロセスで絶えず争われ、不断に討議され続けられるべきものだという。 すなわち「平和主義を実現するための安保体制を憲法で固定するのではなく、民主的立法過程に委ねる」べきであるというのだ。 そして民主的な立法過程に委ねる事が出来れば、憲法9条の改憲も、それが平和主義的な方向であれば構わないとまでいう。 これはあの戦後史再発見シリーズを編集した矢部宏冶氏の考えにも通じる。 しかし、私は憲法9条を変えることには反対である。 私は憲法9条は、日本国民がひとしく正しい歴史認識を持ち、二度と戦争を起こしてはいけないという考えに至るまでは一字一句変えてはいけないと考える。 そしてそれは非現実的な事だ。 あの憲法9条は、誰もが書き変える事の出来ない究極の理想であり、そしてそれは占領下の非常事態に米国から押し付けられてこそ出来た奇蹟的なものである。 法律であれ、憲法であれ、理想的な平和主義を条文にすることは、議論が百出して永久にまとまらない。 だからこそ我々はあの憲法9条を受け継ぎ、それを世界に先駆けて率先する国にならなければいけないのだ。 私は、違憲(というよりも憲法の外にある)の自衛隊を、それが専守防衛に徹する自衛隊であれば解釈改憲であれ事実上の存在であれ、もはや日本国民が認めている者として是認する。 憲法9条を世界に掲げて、専守防衛の自衛隊と外交努力(中国、南北朝鮮を含む東アジア集団安全保障体制の構築)で日本の安全保障を確保する。 これこそが日米軍事同盟に代わる日本の安全保障政策であるべきだ。 今度の安保法案が成立しても、しなくても、憲法9条の危機は続く。 日米安保体制の廃止と、それに代わる日本独自の安保政策について本格的議論をしなくてはならない時が、嫌でもやってくるのである。 護憲派が問われるのはその時である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
新しいコメントを追加