□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年7月12日第483号 ■ ============================================================== いつのまにか日本政府の行事に格上げされた自衛隊創設記念日 ============================================================ ソウルのホテルで11日に開かれる予定だった自衛隊創設記念レセプションが、ホテル側が直前になって会場提供を拒否すると通告してきたため、場所を急きょ日本大使公邸に移して行われることになったという。 このニュースが、日韓関係のさらなる悪化という観点から報じられている。 日韓間の感情的反発の悪循環として報じられている。 しかし、私はこのニュースを、まったく別の観点から関心を持って受け止めた。 それは、私が知らない間に、外務省と自衛隊の一体化がなし崩し的に進んでいるという事実だ。 外務省と防衛省の関係ではない。 外務省と制服組である自衛隊との関係の一体化、蜜月化である。 そして、これは、集団的自衛権行使容認の流れとぴたりと一致する。 そもそも外務官僚と防衛官僚は日米安保条約をめぐる権限争いの関係にあった。 防衛省内部ではシビリアンコントロールのもとに自衛隊(制服組)の上に立つ内局が強く、それに対する自衛隊幹部の反発があった。 外務官僚は対米従属一辺倒であり、自衛隊の運用に責任を持つ防衛官僚とは意見が対立することがあった。 自衛隊幹部は、米軍との関係を最優先する立場から対米従属の外務官僚と近いところがある。 日本がイラク戦争を支持してからというもの、日米間の軍事協力は加速して行き、それにともなって外務省と自衛隊(制服組)の関係はさらに深まった。 そしてとうとう安倍政権下で、衛隊の権限が強化され海外の活動が自衛隊の主要任務にまで引き上げられようとしている。 これまでは、日本大使館に各省の官僚が配属される事は、外務省とそれら省庁との権限争いが絡んで、外務省は決してその数を増やそうとはしなかった。 外務省と防衛省との関係でも、防衛省は内局(防衛官僚)を優先するから、自衛官(制服組)の大使館勤務は限られていた。 ところが最近では自衛官の大使館勤務が飛躍的に増えた。 そして集団的自衛権行使容認でますます自衛隊の海外活動が強化されることになる。 その集団的自衛権行使容認の旗振り役をしたのが外務省だ。 そのような外務省と自衛隊の蜜月化にともなって起きた今度の出来事だ。 私が外務省をクビになる2003年までは、日本大使館が自衛隊創設記念絵レセプションに関与することなどあり得なかった。 実際のところ、私も2003年まで8カ国の大使館勤務をしてきたし、レバノンでは大使として様々な日本政府主催のレセプションを主催してきたが、自衛隊創設記念レセプションなど、聞いたこともなければ、日本政府、すなわち外務省がおよそ関与することはなかった。 そもそも自衛隊創設の創設は朝鮮戦争勃発にともなって占領軍のである米国に命じられてつくられたものであり、防衛省がそれを記念するのは防衛省の決定事項だけれど、日本政府がそれを祝うものではなかった。 外務省がそれを海外で日本政府の行事として関与し、記念レセプションを行うということはなかった。 それが、いつに間にか外務省が主催するレセプションになっていたのだ。 なし崩し的に自衛隊の地位が強化され、外務省が防衛省を通り越して自衛隊と直接結びつく姿がここにある。 外務省と自衛隊が車の両輪のように米国との軍事関係を強化する姿がここにある。 安倍政権の下で外務省と自衛隊が、国民の合意なきままに、どんどんと大きな存在になりつつあるのだ。 これは危険だ。 もはやシビリアンコントロールは有名無実化されつつあるということである。 おそらく日本国民はこの事に気づくことなく、今度のニュースを韓国けしからんということだけで受け止め、受け流して終わりだろう。 メディアは私が指摘したような事は何も書かないだろう(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)