□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年2月6日第123号 ■ ========================================================= 特攻隊の遺書を世界遺産にしようとした南九州市とその適否 =========================================================== これもまた歴史認識問題に行き着くもうひとつのあらたな論争点となる。 そう思わせる記事をきょう2月6日の産経新聞に見つけた。 すなわちその記事は、日本のユネスコ世界遺産申請に対して韓国が妨害工作をしているという要旨つぎのような記事である。 鹿児島県南九州市は特攻隊員の遺書や手紙をユネスコの世界記憶遺産への登録申請を進めている。これに対し韓国メディアは2月5日、これを批判する記事を一斉に掲載し、韓国政府もユネスコ事務局長に反対を表明したという。 この産経新聞の記事を読んで私が驚いたのは、産経新聞が批判している韓国の「妨害工作」のことではない。 はからずも知った南九州市が特攻隊員の遺書や手紙をユネスコの世界記憶遺産へ登録申請していたという事実だ。 私は賛成しない。 称賛さるべきものではないし、二度と繰り返さないために人類共通の記憶にすべきというならあまりにも一方的であるからだ。 地方紙や南九州市地方版ではどう報じられているのだろう。 この申請は大手メディアを通じて全国に知らされ、その申請の適否について日本全体の問題としてもっと議論されていい問題だ。 この産経の記事で私は知った。 ユネスコの遺産事業には1.貴重な自然や建造物を保護する「世界遺産」2.芸能や慣習などの「無形文化遺産」3.古文書や記録の「記憶遺産」に大別されることを。 この特攻隊の遺書や手紙はそのうちの「記憶遺産」として登録申請されているわけだが、この記憶遺産というものについてもっと関心が向けられ議論されていい。 産経新聞はこう書いている。 韓国は慰安婦についての記録を記憶遺産として登録申請しておきながら、日本が特攻隊の遺書や手紙の登録申請するのは日本の軍国主義を想起させるから反対だというのはおかしいと。 産経新聞はまた日本政府が「明治日本の産業革命遺産」として九州・山口の炭鉱事業を日本の産業革命として登録申請している事を教えてくれた上でこう批判している。 韓国外相が「韓国人が強制徴用された事業を世界遺産に登録するのは登録の基本精神に反する」とユネスコ事務局長に伝えているがこれもまた妨害工作であると。 ユネスコの世界記憶遺産の申請問題は、歴史認識問題に絡んでだもう一つの外交戦となってしまった。 韓国の慰安婦問題の記憶遺産としての申請も、日本の特攻隊の遺書・手紙や明治の産業革命の記憶遺産としての申請も、もうひとつの歴史認識問題になってしまったという事だ。 そうであれば、それを産経新聞だけが韓国の妨害工作の問題として取り上げるのではなく、ほかの主要メディアもまた日本全体の問題として取り上げて、日本の正しい対応に向けて合意づくりに貢献しなければいけない。 そしてその解決もまた、どこまで正しい歴史認識を我々が持つかということに行き着くのである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)