□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年2月4日第116号 ■ ========================================================= カイロ宣言を終始する中国を甘く見てはいけない =========================================================== 週刊金曜日の最新号(1月31日号)に、台北在住のフリージャーナリストである本田善彦氏の「カイロ宣言70周年が暗示する日本の未来」と題する記事が掲載されている。 これは、これからますます激しくなっていくであろう日本と中国の外交戦を考える上で極めて重要な記事である。 その要旨はこうだ。 中国はカイロ宣言を重視し、今後も領土問題については一歩も譲らないだろう。それどころか米国を抱き込み、東アジアでの覇権確立に向けて着実に外交戦を展開していくに違いない。中国人の思惟は短期決戦を得意とする日本人とは正反対に長期的な闘争に向いている。日本は今後10年、否20年内に、戦後最も困難な時期を迎えるのではないか。 このような記事が右翼雑誌ではなく週刊金曜日に掲載されているのである。 それほどこの本田氏の指摘は正しく、日中間の外交戦における日本の対応は拙劣であるということだ。 いうまでもなくカイロ宣言は1943年12月1日に発表された連合軍の対日方針である。 ルーズベルト米国大統領、チャーチル英国首相、そして蒋介石中華民国主席の三者がカイロで会談し、合意したものだ。 そのポイントは日本が1914年の第一次世界大戦開始以後に奪い、占領した太平洋における一切の島嶼を放棄させ、日本が清国から盗取したすべての地域を中華民国に返還し、朝鮮の独立を謳っているところにある。 これはあくまでも当時の連合国三カ国の対日方針に過ぎない。 だからカイロ宣言に日本が関心を示さないのもわかる。 しかし、重要な事は日本が1945年8月に受諾したポツダム宣言の第8条で、カイロ宣言の条項は履行せらるべく日本の主権は本州、北海道、九州および四国並びに吾らの決定する諸小島に局限せらるべし、と確認されていることである。 私が本田氏の記事で注目したのは、カイロ会談の中国代表が蒋介石であったため、カイ中国はカイロ宣言を意図的に軽視する傾向にあったが、ここにきてカイロ宣言が日本との領有権争いに有用であるとともに、カイロ宣言が米中同盟を想起させる上で使えると判断し、昨年12月1日のカイロ宣言70周年記念を盛大に祝った、と書いているところだ。 この事を私は個人的にも経験した。 昨年11月末に私は中国中央電視台(CCTV)のインタビューの取材を受ける時があったが、そのインタビューはカイロ宣言70周年記念番組の一環であり、日本としてカイロ宣言をどう評価するかというものであった。 その時の模様を私は2013年11月29日のメルマガ第901号「中国中央電視台(CCTV)のインタビュー取材に応じる」で書いた。 本田氏が週刊金曜日の記事で危惧しているとおり、中国は日本との外交戦を長期的視点に立って本格的に戦いはじめたばかりだ。 その戦いは周到な史実の研究と長期的戦略に基づいて行われているものだ。 はたして日本にそれに見合う努力がなされているだろうか。 明らかに心もとない。 安倍首相とその取り巻きが唱える歴史修正主義に基づく精神論では、中国との外交戦には勝てるはずがないのである。 このままでは20年後、いや10年後の日本は、対中、対米関係において、いまよりはるかに不利な状況に置かれているに違いない。 安倍政権の外交の最大の責任はそこにある(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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