□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年12月16日第953号 ■ ============================================================= 日本版NSCの初代局長に谷内氏が就任する日本の不幸 ============================================================ 特定秘密保護法案を強行採決した直後の記者会見で、安倍首相は初代日本版NSC事務局長に谷内正太郎元外務事務次官を就けることを自ら発表した。 これで決まりである。 来年早々にも事務局の人事全体が発表され、日本版NSCが本格的に動き出すことになる。 その時はこの日本版NSCと初代事務局長となった谷内事務局長に関する記事がメディアに溢れるだろう。 御用メディアのことだからもちろん期待を込めた記事になる。 その前に書いて起きたい。決してうまく行かないということを。 なぜか。 それは勿論日本版NSCなるものが、縦割りの官僚組織で動いている日本という国になじまないからだ。 しかし、それよりももっと致命的な欠点がある。 それは谷内正太郎元外務事務次官その人が、日本版NSCの事務局長にもっとも不適であるからだ。 他紙にさきがけてきょう12月16日の日経新聞が「旬の人 時の人」という人事紹介コラムで書いている。 その中に、彼が不適任である事を見事に示す鍵がある。 一つは彼の告白だ。 引き受けることを悩んだが「首相との関係でお引き受けした」と。 自分で分かっているのだ。不適任であるということを。 しかしここまで安倍首相に乞われて断るわけにはいかなかったというわけだ。 これではうまくいくはずがない。 安倍外交の忠実な推進役となり、安倍首相の考えを増幅させて価値観外交に邁進することになる。 二つは彼が安倍首相の信頼を勝ち得たとされるエピソードの誇大喧伝だ。 すなわち彼が外務事務次官時代に冷え込んでいた日中関係の打開に向け、当時中国の外務次官であった戴秉国(たいへいこく)氏と協議を続け、新潟の温泉地に招くなどして信頼関係を築き、2006年10月の安倍首相の訪中のお膳立てをしたという手柄話だ。 これほど脚色された話はない。 日中関係がこのような個人関係で好転されれば外交はいらない。 よしんばそうであったとしても今の日中関係は谷内氏に人脈など何の意味も持たないほど悪化している。 改善どころか安倍首相と一体となった谷内日本版NSCの外交・安保政策は中国との関係をさらに悪化させるだろう。 それとも安倍首相と谷内事務局長が方向転換をして尖閣棚上げをするとでもいうのだろうか。 しかし、この日経新聞の記事で触れられていない谷内NSC事務局長の致命的欠陥がある。 それは谷内氏ではオバマ政権との日米関係が上手く行かないということだ。 谷内氏はもちろん日米同盟重視を唱えるが、米国を好きでもなければ米国における人脈があるわけでもない。 それどころかオバマ大統領を市民活動家が大統領になったようなものだと公言している人物だ。 こんな事を言うような人物は外交官として失格だ。 米国がそれを知らないはずがない。 彼のカウンターパートであるライス大統領補佐官(国家安全保障担当)はオバマ大統領の側近だ。 安倍・谷内とオバマ・ライスは水と油なのである。うまく行くはずがない。 安倍首相は谷内氏に「ただちに世界を飛び回ってもらいたい」と期待を寄せているという。 しかし彼はそういうタイプではない。 言語を自由に駆使し巧みな外交を行なうというより、国内にいて裏で政策に影響を与えることに適した官僚だ。 おまけに世界を飛び回ると言っても、最も重要な外交は米国との協議である。 駐米大使のポストを辞退したような谷内氏が、それが出来るはずがない。 谷内氏の日本版NSC事務局長就任は、安倍首相にとっても本人にとっても決して最適の人事ではないのだ。 なによりも谷内事務局長の下で始まる来年からの日本の外交・安保政策は、日本国民にとって不幸なことになるだろう(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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