□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年4月4日第239号 ■ ============================================================== 「価値観外交」を唱える安倍外交の孤立 ============================================================== 外務官僚の言葉遊びで始まった麻生外相の「価値観外交」なるものが、いま再び安倍返り咲き政権によって復活し、やたらに唱えられている。 米国流の民主主義、資本主義という価値観を共有する国との同盟関係を重視する外交だということらしい。 いまではもっぱら中国包囲網を目指す外交に使われている。 この「価値観外交」を、国際政治の現実を無視した愚かな外交だと切って捨てた人物を見つけた。 軍事評論家の田岡俊次氏が経済界4月号の連載「軍事の常識、非常識」の中で述べている。 彼はまず昨年12月10日に米国家情報会議(筆者註:CIAが主導し、米国の16の情報機関が集まった連合体)がオバマ大統領に報告した世界情勢予測「グローバル・トレンズ」を要旨次のように紹介する。 すなわち中国のGDPは2030年より少し前に一人当たり1万6千ドルに達し米国を抜く。パックスアメリカーナ(米国による平和)は終ったが米国は対等な列強の中で依然として第一位を保てる。考え得る最良のシナリオは中国と米国が多くの分野で協力し、全世界的で広範な協力につなげること。欧州、ロシア、日本は相対的に穏やかな衰退に向かう・・・ そして田岡氏は日本が価値観外交の相手の一つとしている豪州についてこう述べる。 岸田文雄外相は1月に豪州でボブ・カー外相と会談したが、その直後の共同記者会見でカー外相は「中国封じ込めに加わる気はない。慰安婦問題での河野談話見直しは好まない」と述べた。 因みにインドのサルマン・クルシード外相が3月26日からの訪日を前にして日本記者を前に「インドは中国を念頭にした多国間関係は築かない」と中国包囲網に否定的な考えを示した事は3月24日のメルマガ第210号で書いたとおりだ。 更に田岡氏は続ける。 「韓国の朴槿恵大統領も胡錦涛氏が驚いたほどの中国語の達人。中韓の経済関係からも、また、父(朴正煕大統領)が親日派と批判されていることからも、日本より中国重視にならざるを得ない。台湾の馬英九総統は言わずもがなの親中派」 そして田岡氏はこう日本の唱える価値観外交を切り捨てる。 国際政治を動かす力は主として利害であり、価値観やイデオロギーは表面的な装飾である場合が多い事は歴史をみれば明らか。価値観外交なんて言っているうちに日本は孤立すると。 それでも安倍・麻生政権は「価値観外交」を繰り返し、メディアもそれを書き続ける。 3月26日に閣議了承された平成24年度版外交青書は「自由や民主主義といった普遍的価値観や戦略的利益を共有する国に対して(ODA)支援を拡充していく」と書き、3月31日の朝日は安倍首相のモンゴル訪問を「価値観外交に本腰を入れ始めた」と誉めそやす。 こんな事をやっていれば田岡氏の指摘を待つまでも無く日本は孤立する(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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