■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年3月17日第189号 ■ ============================================================== TPP交渉参加表明をしようと思えば出来た野田首相 ============================================================== 私は3月16日のメルマガ第186号で書いた。 安倍首相がTPP交渉参加表明を行う4か月以上も前に、すでに野田首相はオバマ大統領にTPP交渉参加を約束していたと。 それだけではなかった。 野田首相は日本国民の前でTPP交渉参加宣言をする直前にまで行っていたというのだ。 もしあの時野田首相が参加表明をしていたとしたら、今頃はとても面白い状況になっていたに違いない。 安倍首相はいいところばかりを野田首相に取られて、TPP交渉参加宣言のツケばかりを押し付けられ、自民党のTPP反対派議員に押されて、「野田民主党政権の行った交渉参加表明など撤回してしまえ」と突き上げを食らっていたかもしれないのだ。 世の中タイミングというものがかくも重要であるという好例である。 判断ミスの違いによって攻守逆転するという好例である。 この事を教えてくれたのがきょう3月17日の毎日新聞の記事である。 その記事は3月15日の安倍首相のTPP交渉参加表明が、いかに周到に準備されて行われたかを書いている、いわば提灯記事だ。 安倍首相に近いTPP反対派議員に敢えて自民党内のとりまとめ役を任せ、根回しに専念し、分裂して政権を手放した民主党の愚を繰り返してはならないという切り札を使って突破した、それが見事に奏功した、という記事だ。 しかし、私が注目したのは、その記事の中に書かれていた次のくだりである。 「・・・実は野田政権も交渉参加寸前までこぎつけていた。枝野幸男前経産相は衆院解散後の昨年12月上旬、『米国との協議は整った。表明しましょう』と野田佳彦首相(当時)に進言したが、すでに解散後だったことを理由に野田氏は首を盾にふらなかった・・・」 どうせ選挙の負けることはわかっていた。しかもふたを開ければ大惨敗だ。 ならばあの時、いっそのこと消費税増税とともにTPP参加表明も行って国民の信を問うたほうがよかったということだ。 そしていま安倍首相が強調する決めセリフを先取りして「あの時の判断は間違っていなかったと後で皆が分かる時が来る」と言えばよかったのだ。 そうすれば安倍首相は消費税増税にしてもTPP交渉参加にしても、その「格好のいい」決断の後の、難しい役割を引き受けさせられることになった。 だからと言って安倍首相が消費税増税やTPP交渉参加に反対して、野田首相の政治的決断を撤回するわけにはいかない。 米国が許さないからだ。 安倍首相は再び腹痛を起こしかねない窮状に置かれていたかもしれない。 少なくとも以下のような高支持率は望めなかっただろう。 結果論とはいえ、野田首相の判断ミスこそが、今日の安倍自民党政権の高支持率をもたらしたということだ。 だからといって、野田民主党でも安倍自民党でも対米従属にはかわりはない。 ここが最大の問題である(了)
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