□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年3月7日第167号 ■ ============================================================== ヤッコ前米国原子力規制委員会(NCR)委員長の言葉 ============================================================== 「業界の人たちが不満を持っているのなら、たぶんいいことです。規制当局にとって最も大切なのは、許認可の意思決定の際、独立して判断が下せる能力です・・・」 こういう言葉で始まる3月6日の朝日新聞オピニオン欄に掲載されているグレゴリー・ヤッコ前米国原子力規制委員会(NRC)委員長のインタビュー記事は必見の記事だ。 その言葉は、原発再稼動を米国に約束して帰ってきた安倍自民党政権からの圧力にさらされようとしている日本の田中俊一原子力規制委員会委員長に対する応援メッセージになるに違いない。 米国は1979年のスリーマイル島事故以来凍結されていた原発建設を昨年はじめて再開した。 私は知らなかったのだが、その時、5人いるNRCの委員のうち、ヤッコ委員長一人が反対したという。 その時の模様をヤッコ氏は次のように率直に語っている。 「車を買うとき、『いまブレーキを修理しようとしている』と言われて買う人がいるでしょうか。でも不幸な事に、NRCに対して認可を早く出すよう圧力がありました。私は運転開始までに事故の教訓を反映させることを条件にして認可を出すことを他の委員に提案しましたが、拒否されました。結果として反対票を投じる以外、手段はなかったのです」 反対した事が辞任につながったかどうかについてヤッコ前委員長は次のように語っている。 「よくわかりませんが、私に辞めてほしいという人がいたということは聞いています。ただ、自分の意思で辞めたのであって、辞めざるを得なかったわけではない。後悔はしていません・・・」 朝日のその記事は、任期を約1年残して辞任した裏にはヤッコ委員長の運営手法を批判する内部告発があったと書いている。 ヤッコ氏はさらに続ける。 「最大の問題は委員の人選における原子力業界の影響力です。業界のお墨付きなしで委員になった人はほとんどいません」 「規制当局で最も大切なのは、業界の影響力に左右されない独立した気風です。いまは、多少なりとも原発に懐疑的な人は委員になれません」 「近年、規制に関してNRCの関与を弱め、より事業者の裁量に任せるやり方が強まっています。私は委員長として流れを変えようとしましたが、他の委員の賛同は得られませんでした」 こんなことが米国の原子力規制委員会の人事にあったとは知らなかった。 ヤッコ氏は、そのインタビューで認めているように、原子力発電そのものには反対してはいない。原子力発電の安全性が確保されればそれを是認する立場だ。 そんなヤッコ氏でさえ業界の利益に反すると排除されるのだ。 米国という国は日本よりはるかに腐敗しているということだ。 最後にヤッコ氏は使用済み燃料をどう管理・処分するかという問題を問われてこう答えている。 「短期的には・・・管理できることが分かっています・・・根本的な問題は起きないでしょう。でもその間に最終処分場が見つからなければ原発を止めるしかない。それ以外の答えはないと思います」 やはり原発は止めるしかないということである。 それなら早いほうがいいに決まっている(了)。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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