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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

武器輸出三原則に関する官房長官談話が提示する問題点
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2013年3月2日第153号 ■   ==============================================================   武器輸出三原則に関する官房長官談話が提示する問題点  ==============================================================  3月1日に菅義偉官房長官がついにF35武器輸出三原則に関する官房長官談話を発表した。  このメルマガの読者なら私がこの問題を最大の関心を持って注視してきた事を知っている。それほど大きな問題なのだ。  この官房長官談話によって、また一つ日本政府は我が国の安全保障政策上の大きな難題を強引に押し切った。  それに対し護憲政党は何の抵抗も出来ず、政府の暴走をチェックすべきメディアはその役割をなんら果たせず、そして何も知らない国民は煙にまかれてやり過ごしてしまう。  この事は、何も安全保障政策に限らない。  原発事故問題についても、TPPについても、消費税増税問題についても、およそすべての政策に共通することだ。政府の思いのままの政策が次々と強行されていく。  これがいまの日本の現実だ。  せめて今回の官房長官談話が内包する問題点を書きとどめ、最後まで政府・官僚のごまかしを追及していきたいと思う。  今度の官房長官談話に至るまでには政府の苦悩と迷走があった。  安倍総理訪米前にも発表する予定が訪米後になり、しかも3月1日まで伸びた。  その経緯がそれを物語っている。  そして異例の長さの官房長官談話がそれを物語っている。  私が注目したのは今度の決定が、「武器輸出三原則とは抵触しない」という当初の方針から「三原則の例外」であるという方針に変更された事だ。  もはや三原則に抵触しないという強弁では乗り切れないほどの実態があるということだ。  そして私が注目したのは例外扱いとせざるをえなかったした根拠である。  すなわちF35システムが米国政府の一元的な管理の下にあるから日本の部品ではない、だから日本の原則の適用は受けないといわんばかりだ。  語るに落ちるとはこの事だ。  この釈明は、技術移転は米国によって厳しく制限されている、という釈明と相俟って、もはや日本のコントロールの及ばないものであると言う事を認めているのである。  だから日本の原則の例外なのだ、と。  言い換えればイスラエルへの売却も、戦闘行為に使用する事も、すべて米国の決定は例外にするということだ。  これは武器輸出三原則の骨抜きとか空洞化といった生易しいことではなく、武器輸出三原則を放棄するに等しい決定である。  しかも小野寺防衛相は「談話の対象はF35に限る」と述べたが、政府高官は今後の例外についても「この考え方は踏襲する」ことを認めている(3月2日毎日)。  歯止めなき武器輸出への協力に踏み込んでいくということである。  次に注目すべきは、日本政府は米国に対し、曲りなりにも武器輸出三原則を守ろうとする抵抗を示したことだ。  しかし米国がそれを認めず、やむを得ず例外とせざるを得なかったということだ。  3月2日の毎日新聞の記事の中に次のようなくだりがある。  「三原則との整合性を懸念した日本側は、機体輸出に日本の事前同意を認めたが米国は拒否した・・・結局、政府は日米協力を優先。例外化を最終決断した」  いうまでもなく米国はF35を真っ先にイスラエルに供与したい。  だからこそ今度のF35の部品売却が武器輸出三原則に抵触するおそれが急浮上してきたのだ。  そしてF35のイスラエルへの売却は米国の決定事項である。  日本が同意を与えるなどということは、たとえそれが日本側のアリバイ作りであったとしても米国はそれさえ認めない。日本は例外扱いするしかなかったというわけだ。  因みに官房長官談話においては、イスラエルへの売却が今度の問題の一大論点であるにも関わらず、イスラエルという言葉は一語も出てこない。  私が一番問題にする点はF35がいまだ開発途中の未完成機であると言うことだ。米国防総省さえそれを認めている。事故さえ起きている。  それにも関わらず日本は早々と導入している。そしてその事の説明は今度の官房長官談話では一切の言及は無い。  なぜ日本は他国が購入を控える中で唯一未完成のF35の購入にこだわるのか。  それは日本がこのF35の開発・補修の拠点国にされようとしているからだ。  この事を当初からひとり書き続けているのが産経新聞だ。  産経新聞以外は知ってか知らずか、この事に一切言及しようとしない。  その産経新聞は3月2日の紙上でも明確に次のように書いている。  「・・・日米間では、日本を将来的にF35の『部品製造・修理拠点』として、自衛隊や在日米軍だけでなく、周辺国が導入した機体の修理・整備まで日本で行なう構想まで出ている。実現すれば(日米)同盟強化にも資することになる」  なぜ産経新聞だけがこの問題を書き続けるかの理由がここに表れている。すなわち産経新聞はそれを歓迎しているのだ。その情報を流し続けて既成事実化しようとしているのである。  今度のF35武器輸出三原則に関する官房長官談話の裏には、米国の強力な圧力があり、それに抵抗する政府内部の葛藤があった。  そして最後は対米従属派と軍産複合体の利権が慎重派を抑えた。  この決定によって日本もまた米国のように防衛省と武器輸出産業の利権構造が一層進んでいく。  もちろん最後決定を行なったのは安倍首相である(了)。 ─────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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