□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年2月23日第136号 ■ ============================================================== 外務省が日米地位協定の改正に踏み切れない理由 ============================================================== 孫崎享著の「戦後史の正体」を世に出した創元社が今度は日米安保条約の正体を見事に言い当てた本を2月26日(予定)に刊行する。 沖縄国際大学大学院教授の前泊博盛(まえどまりひろもり)氏著の「日米地位協定入門」がそれである。 日米安保条約を少しでも学んだ事のある者にとっては、それが決して日本を守るものではなく米軍を日本に駐留させるための一方的な条約である事を知っているはずだ。 そしてその事は岸信介首相によって1960年に改正された現行日米安保条約においても少しも変わっていない。 しかも在日米軍の特権・免除をはじめとした基本事項について条約には一切書かれていないところも同じだ。 すべては国民の目の届かない行政協定に委ねられているのだ。 そしてその行政協定、すなわち日米地位協定の中にこそ米国の狙いがすべてある。 つまり日米安保条約の本質は日本国民がほとんどその内容を知らない日米地位協定の中にこそあるのである。 著者の前泊教授は書いている。 それは「アメリカが占領期と同じように日本に軍隊を配備し続けるための取り決め」であると。 「だからアメリカ本国ではできない危険なオスプレイの訓練を日本では行なうことができるのである」と。 「憲法よりも重要な行政協定である」と。 この日米安保条約の正体を見事に解説した「日米地位協定入門」はまさしく国民必読の書であるが、その本の宣伝をすることがこのメルマガの目的ではない。 この不平等な米軍駐留条約を改定することが出来れば米軍は日本から撤退するという事を例示することがこのメルマガの目的である。 2月22日の毎日新聞は要旨次のような記事を掲載していた。 すなわちNATO(北大西洋条約機構)は2月21日にひらかれた国防相会議で米国撤退後のいわゆる国際部隊の大枠を決める予定だったが、米国の方針決定が遅れ、無期延期となったという。 米国の方針決定が遅れた理由は、駐留米軍の地位を定める協議が難航したからだと言う。 すなわち米側がアフガン国内法による米兵の訴追を免除する条項を協定に盛り込むよう要求したのに対し、アフガン側がこれを拒否しているのだ。 米軍がイラクから撤退した背景にも同じ問題があった。すなわちイラク戦争後も米国はイラクに米軍を駐留させようとしたが、米軍の刑事免責問題でイラクが最後まで譲歩しなかった。それが米軍の完全撤退につながったのだ。 米政府内ではアフガンとの安保協定がまとまらない場合、アフガンからの完全撤退論さえも出ているという(2月22日毎日)。 この事から明らかなように米国は自らの軍隊が駐留国の法律に服する事を徹底して嫌う。 それが叶わなければ撤退も辞さないのだ。 だから治外法権を認めた日米地位協定の改正に米国は応じないのだ。 米国が応じない事を知っているからこそ外務省はどんなに米兵の違法行為が繰り返されても、そしてその都度高まる日米地位協定の改正要求に対しても、絶対にこれに応じようとしないのである。 米国が嫌がる交渉をしたくないのである。 改正ではなく自分たちだけ出来る日米地位協定の「運用」、すなわち「解釈」で誤魔化そうとするのだ。 イラクやアフガンに出来る事が日本ではできない。 正論を押し通せば米国は最後は譲歩するのに、日本ははじめからそれをあきらめている(了)。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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