Foomii(フーミー)

天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

石原慎太郎が投げつけた尖閣購入問題の本質論から逃げるな
無料記事

□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月12日第448号 ■   ==============================================================   石原慎太郎が投げつけた尖閣購入問題の本質論から逃げるな  ==============================================================  橋下大阪市長と同様に、石原慎太郎の言動のすべてが気に食わなくて、 間違いだと決めつける者がいる。  もちろんそれは間違いだ。  石原慎太郎が6月11日、衆院決算行政監視委員会なるものに呼ばれ て尖閣諸島の東京都購入問題についてこう答えた。  本来国がやるべき事をやらないから東京都(自分)が筋違いのことを しているのだと。国が買うのなら喜んで売却すると。  これをきょう6月12日の朝日新聞は石原慎太郎の独演会と書いている。  その一方で朝日新聞はまた野田政府は対応に苦慮していると書いている。  朝日新聞もまた、石原慎太郎の投げかけた本質論に答えられないのだ。  それならば私が書く。  尖閣諸島はいまや日中間のもっとも重要な政治・外交紛争の地だ。  それを民間人が保有し続ける事が妥当だったのか。  なぜ歴代の政府がもっと早い段階で国有化してこなかったのか。  この事について誰も語らない。  憲法上個人の所有権が認められているから国有化できなかったとでも いうのだろうか。  そんなことはない。その気になれば政府は正当な補償の下に土地収用 できるし、そうしてきた。  いくら財政困難であるとはいえ、思いやり予算を米国にばら撒いてきた 政府だ。予算がないわけではない。  土地所有者も、東京都に売却すると言っているのだから国に売却しない とは言えないはずだ。  歴代の自民党政権もそしていまの民主党政権も尖閣諸島を国有化する気 がなかったのだ。  なぜか。  そこで問題なるのが丹羽大使の「もし実行されれば、日中間に重大な 危機をもたらすことになる」発言だ。  私は丹羽大使の発言の真意と、それをあっさり撤回して謝罪した理由 こそ質さなければならないと思う。  石原慎太郎の都知事が買うから大変な問題になるのか、それともたとえ 国が購入しても大変な事になるのか。  これである。  前者であればその通りだ。  対中強硬派の石原氏が買えばろくなことにはならない。  しかしこれは石原氏もあっさり認めた。国が買い取れば喜んで渡すと。  もはや丹羽大使の懸念はなくなった。国が買い取ればいいのだ。  もし丹羽大使の真意が、たとえ国が買い取っても日中間で大問題となる というのなら丹羽大使の考えは正しいのか。  これである。  国が購入する事の是非こそ尖閣購入問題の本質なのである。  6月8日の産経紙上で尖閣購入問題についての孫崎享氏と一色正春氏の 討論が掲載されていた。    一色正春氏は、中国人漁船衝突ビデオを流出させた元会場保安官で対中 強硬派だ。  その彼が言っている。  国が買い取るのが筋であるが国は(保有しても)何もせず、むしろ尖閣 諸島を守る事を邪魔しているから石原慎太郎の東京都が買って保全措置を とるべきだと。  これに対し孫崎享氏はこう言っている。  「(国が購入することは)一つの考え方として筋が立っている。微妙な 地域を国が安全保障上、責任を持つことはありうる・・・」と。  どちらも国の購入を認めている。  その後の考え方が違うのだ。  孫崎氏は次のように続ける。  「現状を棚上げし、その状態を維持していくことが一番いい選択だ」と。  つまり、軍事的な衝突の可能性、偶発性を避け、外交的に現状維持で 双方の利益を損なわない知恵を出し合うことこそ最善の策であると言って いる。  これである。  つまり尖閣購入問題の本質は国が購入するから問題なのではない。  石原慎太郎という危険な人物が都知事である東京が購入するから問題 なのだ。  そしてたとえ石原慎太郎が尖閣諸島を国に転売するとしても、その 国の指導者が石原慎太郎のような考え方を国是とすれば危険なのである。  つまるところはこの国の外交姿勢にある。  石原慎太郎が投げかけた尖閣諸島購入問題は、つまるところこの国に 正しい対中政策を迫ったということだ。  それは決して石原慎太郎や一色正晴が言うような、尖閣諸島の実効的 支配を中国と競い合うことではない。  中国の拡張政策を制止し、軍事的衝突の危険性、偶発性を招くことなく、 外交的に毅然とした姿勢を貫いて国益を守る、これである。  民主党政権下の対中外交は、自民党政権以上に事なかれ主義に堕して しまった。  その欲求不満が石原慎太郎ら対中強硬派を自民党政権下以上に勢いづか せた。  尖閣購入問題をここまで大きくしてしまったのは、難しい問題をすべて を先送りする野田民主党政権の無能さにある。                                 了   ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

2023年のバックナンバー

2022年のバックナンバー

2021年のバックナンバー

2020年のバックナンバー

2019年のバックナンバー

2018年のバックナンバー

2017年のバックナンバー

2016年のバックナンバー

2015年のバックナンバー

2014年のバックナンバー

2013年のバックナンバー

2012年のバックナンバー

2011年のバックナンバー

2010年のバックナンバー

2009年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2025年1月19日に利用を開始した場合、2025年1月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2025年2月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する