□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年5月29日第415号 ■ ============================================================== 6月末に公表される国会事故調査委員の報告書に注目せよ ============================================================== 菅首相に対する公開聴聞が終わり、それがメディアで大きく報道され たことによって、鳴り物入りの国会事故調査委員会は一つのヤマ場を 終えた。 ショーが終わればメディアはその後の事は報じなくなる。 国会事故調査委員会のことなど関心がなくなる。 しかし国会事故調査委員会の本当の責務は6月末にも国民に公表され る報告書の内容にある。 かくも大きな責任を引き受けた国会事故調査委員会のメンバー、とり わけそのまとめ役である黒川清という人物の覚悟と力量が問われる。 我々国民が今後注目すべきはまさしくこの点である。 菅首相の答弁とそれを報ずる各紙の記事を読むと総じて菅首相に批判 的である。 「言い訳ばかり」、「責任逃れ」、「被災地怒り心頭」などという 言葉が目立つ。 確かに菅氏は当時の最高責任者であり、その言動に疑問のあった事も 事実だろう。 個人プレーとか、イラ菅と言われる感情的な言動とか、あったかもしれ ない。 しかし、そんな事は枝葉末節なことである。 あの時誰が責任者であっても、それ以上の対応を取れたと自信を持って 言える者はいないはずだ。 みなそれを知っていながら、菅叩きをして責任回避をしているのだ。 国会事故調査委員会が目指すものは関係者の責任を問うことではない。 原発事故の実態を究明し、今後の対策を提示することである。 そしてこの点について菅首相は極めて重要な発言をした。 このメルマガで書きたいことはここにある。 一つは事故当時、政府関係者も東電関係者も、少なくとも菅首相に アクセス出来る立場にいた閣僚、幹部官僚、幹部職員たちの誰一人として、 的確な情報と判断ができるものがいなかった事実だ。 すなわち今度の原発事故の責任は野田首相も含め当時の政府全体の責任 であり、さらにいえば原発政策を推し進めてきたこれまでの政府・官僚・ 財界・有識者全体の責任なのだ。 この事を私は3・11が起きた直後に繰り返し強調した。 すなわち3・11は戦後のこの国の支配体制が引き起こした人災の要素 が多分にあり、そうであるならばその支配体制が続く限り正しい解決策は 彼らには期待できない、3・11の災いを契機に支配体制の根本的変革が 起きなければならない、と。 菅首相はまた二つ目として極めて大胆な事をしゃべった。 それは今度の事故をきっかけに、これからの日本は脱原発を目指さなけ ればならないと思うようになったと語ったことである。 菅首相がいまさらこんな事を言う事について私は強い違和感を覚える。 それは彼の今後の生き残りの方便と聞こえる。 しかし、その事を割り引いて考えれば、この発言こそ国会事故調査委員会 がその報告書で書かなければならない事なのである。 この国の指導者になろうとする者に言ってもらいたい言葉だ。 6月末と言えば野田民主党政権の帰趨が見え始める時だ。 6月末と言えば野田民主党政権が原発再稼動を含めその原発政策を明ら かにする時だ。 その時に果たして国会事故調査委員会はどのような報告書を出すのか。 おりしも原子力ムラという言葉に象徴されるこの国の支配体制が、この 期に及んでも嘘や隠蔽や天下りなどを重ねて復権に余念がない事が明らか にされてきている。 報告書はこの国の権力構造に切り込めるのか。 脱原発の方向を明確に打ち出せるのか。 その時、黒川清委員長の正体がわかる。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)