□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年4月3日第272号 ■ ========================================================= 「自立死」の米国と「孤立死」の日本の違いに思う ======================================================== 「孤独死」や「孤立死」という言葉が毎日のようにメディアに 見られるようになった。 これを見て、これが高齢者社会の日本の現実だと、誰もが割り 切って考えてしまいがちだ。 私もそうである。 しかし、決してそうではないのかもしれない。 孤独死は日本特有の言葉だ。孤独死の中に日本が抱えている大き な諸問題が凝縮されているのではないか。 そう思わせてくれる記事を見つけた。 4月3日の産経新聞「話の肖像画」というオピニオン欄に矢部武 という人の「幸せな自立死」という随想があった。 矢部武とは、日本と米国を行き来しながら雇用やテロなどを取材 し、発信しているジャーナリストである。 その彼が次のように言っているのだ。 彼の最新著「ひとりで死んでも孤独じゃない『自立死』先進国 アメリカ」(新潮新書)を貫くテーマである。 それは一言でいえばこういう事だ。 米国も高齢化社会に向かっている。一人暮らしの人は多い。しかし 日本の孤独死状況を伝えるとみな驚く。高齢者を大切にする文化の ある日本で、遺体が何週間も見つからないということが信じられない、 と。 この違いは何か。死はしょせん一人で臨むもの。問題は、何の支援 も受けられずに孤立して、精神的にも経済的にも追い詰められ、亡く なった後、何週間も何か月も遺体を発見してもらえないことだ・・・ こう書いて彼は人に迷惑をかけない自らの自立死に備えている事 を次のように語る。 「死後すぐに発見されるようにしておけば、あとは生きることに 全力を注げます」、と。 この矢部氏の随想を読んだとき、「孤独死」や「孤立死」と彼の 言う「自立死」との違いについて様々な思いがよぎる。 その思いは矢部氏が言うように高齢者が単身生活で一人死んでいく 事を悲惨で悲しいものと捉える必要はない、という生き方の問題に とどまらない。 矢部氏がここで指摘していないこの国の政策の貧困が「孤独死」の 背景に間違いなくある。 ひょっとして日本は米国以上に社会的弱者に冷たく無関心な国に なってしまったのではないか。 いや、思い込みに反して、もともと日本は高齢者を大切にしない 文化の国なのではないか。 大震災や原発事故や、景気対策などという問題を議論する以前に この国の政治がなすべきもっと根源的なことがあるのではないか。 多くの事を考えさせられる矢部氏の「自立死」のすすめである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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