□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年3月13日第201号 ■ ========================================================= 追悼式典における天皇陛下のお言葉と野田首相の式辞の違い ======================================================== 東日本大震災1周年追悼式は終わった。 これを機に大震災をめぐるメディアの流れ変わっていくに違い ない。 おそらく追悼から復興へと急速に舵が切られ、そしてその事は 野田民主党政権の政策と呼応していく。 すなわち「いつまでも悲しんではいてはいられない。さあ、 復興だ」という掛け声の下に、瓦礫処理や原発再開が加速し、 復興の為に消費税増税は不可避だというキャンペーンがますます 声高になるだろう。 それに立ちふさがるのが天皇陛下であるとしたらどうだろう。 これほど都合の悪いことはない。 なんとしてでも国民にそれを気づかせてはならない。 そんな思いが追悼式典の際の天皇陛下のお言葉の報道に垣間見 るような気がしてならない。 この追悼式はもちろん東日本大震災による犠牲者を悼む式典だ。 そしてその被災地、犠牲者の大きさは津波によるものが圧倒的だ。 しかし、被害の深刻さと復興の困難さ、そして日本国民全体に及 ぼす影響は原発事故被害である。 しかも津波は一年前に終わったが、原発事故はいまも続いている。 この事に関し天皇陛下はそのお言葉の中で次のように言及された。 「・・・さらにこの震災のため原子力発電所の事故が発生した ことにより、危険な区域に住む人々は住み慣れた、そして生活の場 としていた地域から離れざるを得なくなりました。再びそこに安全 に住むためには放射能の問題を克服しなければならないという困難 な問題が起こっています・・・」 お言葉の全体の長さを考えると原発事故についてここまで言及 された事は、いかに天皇陛下が原発事故を深刻にとらえ、そして その解決の遅れに懸念を持たれているかが伺える。 ひるがえって野田首相の式辞は官僚が書き上げた文章そのものだ。 原発事故に関する部分は次のように述べるだけだ。 「・・・原発事故との戦いは続いています。福島を必ず再生させ、 美しいふるさとを取り戻すために全力を尽くします・・・」 そこには自らの責任感の重さを自覚している深刻さはない。 天皇陛下のお言葉に見られる被災民への感情の発露は微塵も感じ られない。 遺族代表の言葉には原発事故に言及する言葉は見られなかった。 さすがに佐藤雄平福島県知事の式辞には放射線への不安と原子力 に頼らない社会をめざすという言葉があったが、他の二人の県知事 の式辞には何もない。 おそらくこの追悼式典は政府・官僚によって巧妙に原発事故への 言及が忌避されたに違いない。 それにただ一人抵抗したのが天皇陛下ではなかったのか。 おそらく天皇陛下は消費税増税にも反対されているに違いない。 注目すべきは天皇陛下のお言葉をめぐる報道ぶりだ。 NHKも民放もそして新聞も天皇陛下の原発事故に対する心痛を あえて大きく報じようとはしなかった。それどころかそれを正しく 伝えなかったのだ。 それにしてもと思う。 天皇を礼賛する右翼は天皇陛下を被曝させた深刻性をまったく 取り上げず、天皇制を否定する左翼は、天皇陛下がいかに平和を 語り原発事故対策の重要性を政府に求めても、それを評価しようと しない。 国民の統合の象徴としての天皇陛下とは今の国民にとってどう いう存在なのだろうか。 今の天皇陛下がご健在の時に、この国は正しい国家の姿を取り 戻さなくてはいけないと思う。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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