□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年3月8日第189号 ■ ========================================================= 米国の庇護に甘んじてきた国々が成長することはない ======================================================== 日本の安全保障論議は日米同盟の重要性を繰り返すばかりでいつ までたってもまともな議論が進まない。 それを外国人が見事に言い当てている記事を目にしたので紹介する。 週刊東洋経済3月10日号に、オランダのジャーナリストで米ハー バード大学教授のイアン・ブルマ氏が「米国の尻込み状態は憂うべき ことなのか」というタイトルの論説を書いていた。 ブルマ氏はベンガルの知識人チョードリの言葉を引用し、英国に よるインド統治が終焉を迎えたのはFUNK、つまり尻込みが原因 だったという。 ブルマ氏はまた、米「ネオコン(新保守主義)の知識人ロバート・ ケーガンの近著の言葉を引用し、米国の軍事力はいかなる挑戦者に 対してもいまだ「間違いを正す」圧倒的な軍事力を持っている、 米国の唯一の危険は衰退主義、つまりやる気の喪失であるという。 そしてブルマ氏は、チョードリやケーガンのそのような軍事力が 果たす役割を一応は認めた上で、フランスのルイ15世の死に際の 言葉を引用して次のように反論する。 ルイ15世は「私の死後、世界は大混乱に陥る」と言い残して 死んだがそれはうぬぼれだった、と。 そして米国のリーダーシップがないと世界の秩序が崩壊すると いう前提もそれと同様に、さほど確かなものではないと言う。 そしてブルマ氏は断じる。 時代遅れの軍事的優位はもはや米国の国益にとって適切ではない。 イラクやアフガンで経験してきたように「平和のための厳しい戦争」 が最も効果的な外交政策でないことは証明されたし、中国は着実に アフリカ諸国への影響力を強めつつあるが、それは軍事力によって ではなくカネの力によってであると。 ロムニーやその支援者たちは、大統領選の演説の中で米国の軍事力 のみが世界の秩序を維持できると主張するが、これは極めて復古的な 考え方であり、冷戦時代のノスタルジーである、と。 それに対してオバマ大統領が米国の限界を認めるのは、臆病な悲観 主義のあらわれではなく、むしろ現実的な知恵を示すものであって、 そんなオバマ大統領の「尻込み」状態は憂うべきことではない、と。 私が注目したのは次のような日本につての言及部分である。 すなわち、日本が自らの役割を果たす用意がないように見えるのは、 何十年間にもわたって米国の軍事力による安全保障に依存してきたから だ、米国の軍事的庇護に甘んじてきた国々は成長することはない、 日本はアジアのほかの民主主義国家と協力することにより、台頭する 中国とのパワーバランスの調整を図るべきだ、と。 このような論説を説く日本の学者やジャーナリストが一人として出て こない、認められないところに、日本の安保論議の不毛さがある。成長 できない理由がある。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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