□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年2月21日第149号 ■ ========================================================= 私は中国の対シリア仲介外交を排す ======================================================== 中国が「シリア情勢の平和的な解決を推進するため」にシリア に特使を派遣すると発表したのは2月16日だった。 ロシアとともに対シリア制裁安保理決議案に拒否権を発動し、 シリア情勢が更に悪化したことに対する対応策であることは明ら かだ。 しかし私は「アサド政権と反体制派の仲介役を果たす意思が ある」(2月17日日経)と語ったという中国政府をの外交姿勢 を見て、それは間違っていると思った。 いまなすべきことはアサド体制の退場を求めることである。 そしてこれまでのアサド体制の人権抑圧の責任を国際法に従って 正しく問うことである。 アサド体制を崩壊させると中東が混乱すると皆は言う。 正体がわからない反体制派を支持することは危険だと言う。 それらは一見もっともな意見だ。 しかしそのような意見が幅を利かせるから「中東の春」はいつ までたっても実現しないのだ。 政権交代には混乱はともなう。ましてや何十年間も続いた独裁 政権から民主政権への交代だ。混乱が起こらないほうがおかしい。 反体制派の正体は不明であるかもしれない。裏でそれを支援する 勢力が存在かもしれない。 だからこそ国際社会は民主的な選挙を経て国民が選ぶ政権づくり に手を貸さなければいけないのだ。 アサド体制と反体制の仲介を行なうという中国の外交は、二重 の意味でシリア市民の民主化要求を潰すものだ。 そう思っていたら2月21日の毎日新聞「記者の目」で、外信 部の小倉孝保記者がアサド大統領の友人の言葉を借りて次のように 書いていた。 シリア民衆に権力移譲すべきだ。アサド体制は終わらなければ ならないが、外国に影響された反体制派に代わるだけなら国民は ウンザリだ、と。 そうなのだ。 中国がなすべきはアサド体制と反体制派の橋渡し役ではない。 アサド大統領に引導を与え、民主的選挙によって新しい政府を つくることに協力することなのである。 奇しくも中国がシリアに特使を派遣するという記事の傍らに、 中国の外交に関するもう一つの記事を見つけた。 それは中国政府が北朝鮮からの脱北者を北朝鮮に送還しようとし、 それに対し「人道問題だ」と韓国政府が中国政府に送還中止を求め ていると言うニュースである(2月18日朝日)。 いわゆる政治亡命者からの庇護を受けた如何なる国もその亡命者 を引き渡してはならないというのは国際的に認められた人権上の 合意である。 それをあっさりと放棄する中国の外交はやはり人権無視の外交 である。 中国はいまのところ韓国政府になんらの返答を行なっていない という。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)