□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年2月19日第142号 ■ ========================================================= 公文書管理法4条にみる民主党政権のもう一つの裏切り ======================================================== 2月19日の毎日新聞「時代の風」で加藤陽子東京大学教授が 書いていた。 原発事故への対応策の決定経緯を示す記録を残していなかった 事が問題になったが、その背景に「公文書管理法」という新しい 法律が昨年4月に施行されていた事を知る人は、あまり多くなか ったのでは ないか・・・ こういう書き出しで始まる加藤陽子氏の解説は情報公開に消極 的になった民主党政権に対する鋭い批判だ。 加藤氏はその評論で、日本が欧米と比べてなぜここまで記録を 大切にしてこなかったのか、それはつまるところ政治(中央と 地方の間で権限と予算を配分する力、国民の利益と義務を配分 する力)が日本にはなかった、と結論づけ、その説明を詳しく解説 している。 しかし私がその中で注目したのは、冒頭で述べられた公文書 管理法という新たな法律の設立経緯とその内容についてである。 すなわち公文書管理法は民主党がまだ野党の時に、年金記録問題 などずさんな公文書の管理が明らかとなり、自民党に迫って福田 政権下でつくらせた(2009年6月24日)法律である。 だからその法律は民主党の逢坂誠二、西村智奈美両議員が福田 自民党政権と一体となってつくられた。 私が驚いたのはその法律が極めて厳格に公文書記録の作成を義務 付けているということだ。 その事を加藤教授は次のように書いている。 「・・・公文書管理法はその4条で、行政機関の職員による文書 の作成義務を定めている。この場合、最終的な結論部分にあたる 決裁文書のみを残すのでは駄目で、『経緯も含めた意思決定に至る 過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、 または検証』可能な文書の作成が義務付けられた。政策決定過程が わかるような文書の残し方を義務付けた第4条は、法律の条文として はくどいほど配慮の行き届いた表現となっている。それは公開請求 されて都合の悪い文書を最初から作らない等の抜け道を、今後は許 さないとの意思の表れにほかならない。この法文は、政府案を元に、 与野党の実務者協議による丹念な修正過程を経て作られたもの だった・・・」 賢明な読者なら私がこのメルマガで何を言いたいかもうお分かり であろう。 あの日米密約の存在を中途半端な形で終わらせた岡田外相(当時) や、政府部内の記録作成に極めて消極的な発言を繰り返す藤村官房 長官を見ていると野党時代の民主党と様変わりだ。 野党の時に自民党を追い詰めて厳格な文書管理法を迫った民主党は、 その法律が昨年4月に施行された後に原発事故記録の未作成問題に 見舞われた。 歴史の皮肉だ。 それだけではない。 原発事故記録の不作成について責任を取ろうとせず、今後の政策 決定に関する記録作成にも不熱心だ。都合の悪い情報隠しに汲々と してるごとくだ。 権力を握ったとたんに豹変した民主党のもう一つの証拠がこの公文書 管理法代4条とその成立過程にある。 はらかずも加藤陽子教授の「時代の風」はそんな民主党をあぶり出す 記事になったということである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)