□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年2月9日第111号 ■ ========================================================= 行天さん、もうすこし早く言ってほしかった ======================================================== 2月7日の朝日新聞のオピニオン欄に行天豊雄(ぎょうてん とよお)元財務官のインタビュー記事が載っていた。 題して「ドルの落日」である。 行天氏は1955年に大蔵省に入り、国際金融局長として プラザ合意(1985年)に、そして財務官としてルーブル合意 (1987年)に関わった国際通貨戦争の目撃者だ。 いうまでもなくプラザ合意とは、それまで1ドル240円台の 水準であった円ドルレートを一気に円高に向かわせるきっかけと なった合意であり、ルーブル合意とは、その行き過ぎのため1ドル 150円台になった円ドルレートを是正しようとした合意である。 (註:ルーブル合意の後も各国の強調の乱れによりドル安は是正 されず一気に1ドル120円台にまで進んだ) 行天氏は官僚の年次からすれば私より14年も大先輩になる。 古き良き時代の大蔵官僚だ。 私が接してきた歴代の財務官はろくでもない者が多かった中で、 なぜか行天氏には私は好感を抱いたものだ。 その行天氏が今80歳を超えて国際金融専門家としての自らの 考えを正直に述べている。 彼は今の国際金融状況の不透明さの原因を米国の一極支配が終わ ったからだと次のように述べる。 「戦後世界はよかれあしかれ米国の一極支配。ドルは米国の 圧倒的な優位を支えとして基軸通貨であり続けた。その米国経済 が段々弱って(来て)、稼ぐ以上にお金を使う宿あのような過剰 消費体質(となり、それに)に加え・・・実体経済を支えている 生産や投資が力を失った。世界の貿易や生産に占めるシェアは 下がり、ドルも信用でき(なくなった)・・・」 そして米国は基軸通貨国としての責任を果たしていると思うか との問いに対し次のように語っている。 「米国にとって通貨の安定とは国内のインフレをコントロール するということ。ドルと他の通貨には関心がなかったのではないか。 実話かジョークかわかりませんが、ロンドンで通貨会議があった時、 英国の蔵相が隣にいた米国の財務長官に『今朝のドルの相場は どうだね』と聞いたら、財務長官はキョトンとして、『1ドルは 1ドルだ』と言ったという。そうしたドル中心の天動説があった ことは確かです」、と。 そして行天氏は、「ものづくりの力が落ちた米国が金融で稼ごう と金融自由化を各国に迫り、市場を肥大化させたのが今日の金融 危機の元凶ではないか」という問いに答えて次のように米国の グリーンスパン前米連邦準備制度理事会議長を批判する。 「市場は自由にしておけば大丈夫だ。金融工学でリスクは管理 できるという根拠無き過信があった。そうした考え方の象徴が グリーンスパン前米連邦準備制度理事会議長でした・・・」 当時はあれほど誉めそやしていたグリーンスパンを今になって ここまで厳しく批判するようになったのだ。 そして極めつけは次の言葉である。 「85年のプラザ合意以来、日本は米国の政策につきあい 過ぎたという反省はありませんか」という問いに対する答え である。 「我々も米国の財政や貿易の赤字には危惧を抱いていました。 だが、基軸通貨国であるのみならず、世界で一極支配的な力を 持った米国の政策を変えられる国はなかった。特に日本の場合、 自動車など雇用の裾野が広い輸出産業が米国市場に依存して いる。日米安保条約もある。米国に圧倒的に頼ってきたから、 日本は切れるカードもなかった・・・」 ここまで率直に語る行天氏に私は行天氏の正直さを感じる。 しかし同時にまた行天氏の官僚人生のたそがれを見る。 それならば、なぜもっとはやくそれを国民の前で言わなか ったのか。 「切れるカード」を持とうとしなかったのか。 行天さんもやはり「優秀な」官僚の一人であったという ことである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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