□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月13日第797号 ■ ============================================================= アラブ連盟がシリアを資格停止した事の衝撃 ============================================================= アラブ連盟は11月12日緊急外相会議を開き、シリアのアラブ連盟 加盟資格停止を決定した。 この報道は衝撃的だ。 そもそもアラブ連盟は、加盟国の間の利害関係がバラバラな上に、 アラブ特有のいい加減さもあって、意見がまとまる事がない。 そのアラブ連盟が、アラブ連盟の主要国であるシリアの追放を決定 するという事は、かつては考えられない事であった。 その考えられない事が起きたのにはもちろん理由がある。 シリアのアサド政権の反政府デモ弾圧が止まないからだ。 アラブ諸国の独裁政権が次々と倒れ、まがりなりにも民主政権が出来 つつあるからだ。 そして欧米諸国が一致してシリアの人権弾圧に厳しく反対している からだ。 果たして「アラブの春」はシリアにまで及ぶのか。 ここに注目すべき発言がある。 シリアのアサド大統領が10月30日付の英紙サンデー・テレグラフ とのインタビューで次のように国際社会の介入を牽制したのだ。 それを10月31日の読売や東京が報じていた。 「シリアはこの地域の中心であり、断層だ。何かをすれば地震が 起きる」(読売) 「シリアに介入すれば(中東)地域全体を炎上させることになる」 (東京) 私はこの言葉を読んだ時、正直言って身震いした。 追い込まれた末に発したシリアの最後で、最強の脅しであるからだ。 私がレバノンに勤務していた時、レバノンの事情通が口をそろえて 言っていたことがある。 シリアは米国、イスラエルと通じている、と。 世間ではシリアはイランと繋がっていると思われている。 しかしその実シリアがもっとも神経を注いできたのが米国、イスラエル との関係である。 すなわちシリアは独裁体制の生き残りのためにイランと米国、イスラ エルの双方にカードを切り、バランスをとってきた。 そのバランスが保たれる限り、中東の紛争は局地戦争にとどまってきた のだ。 アサド体制を追い込むとそのバランスが壊れる。シリアが反イスラエル に舵を切ったとき、中東全体が戦火に見舞われることになる。 アサドはそうメッセージを送っているのだ。 果たして米国はアサド体制の崩壊に踏み切ることが出来るのか。 それとも米国はリビアと違ってアサド体制だけは守ろうとするのか。 たとえ米国がアサド体制を守ろうとしても、火がついたシリア国民の 反政府運動は収まるのか。 さらなる流血が続くのか。 国際世論はそれを許すのか。 「アラブの春」はいよいよ最終局面に差しかかってきた。 それは取りも直さず米国、イスラエルの中東政策の最終局面でもある。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)