□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月10日第788号 ■ ============================================================= 中国漁船の領海侵犯に毅然とした対応をしないこの国の政治 ============================================================= 長崎県五島列島沖を中国漁船が領海侵犯した事件が起きたのは11月 6日であった。 それから4日もたつというのに、右翼・反中国の産経新聞をのぞいて この問題の深刻性を指摘する報道がない。 私はここにこの国の外交力の欠如を見る。 今度の中国漁船の領海侵犯は、2010年9月に起きた尖閣諸島沖の 中国漁船衝突事件とは決定的に異なる。 あの事件は領土紛争と直接に関係したやっかいな問題だった。 どちらも譲れない。 だからこそ日中間でそれを政治問題化せずに追い返すという了解が あり、それを破って逮捕・拘束した民主党政権の対応が、日中間の紛争 の原因であった。 しかし、今回の五島列島沖の領海侵犯は領土紛争とは何の関係もない。 弁解の余地のない中国漁船による日本の領海侵犯だ。 日本が主権を放棄する国であれば話は別だ。 しかし、もしそうでなければ今度の中国漁船の領海侵犯については、 日本は外交力を駆使して世界に向けて強く抗議すべきなのだ。 両国間の大きな外交問題としなければならない。 ところが日本の政治の対応はあまりにも鈍い。 中国側のほうから、「これは一般的な漁業関係の問題だ、日本側が なるべくはやく適切に解決するように願う」(11月9日読売ほか)と、 外交問題化を避けるように言われる始末だ。 なぜ私がこの領海侵犯事件を外交問題化してつよく迫れと言うのか。 それはいたずらにわが国の対中強硬派を勢いづかせないためにも 不可欠な外交努力であるからだ。 今回のような領海侵犯は、タカ派、反動右翼にとっては中国脅威論を 煽り立てるには絶好の機会だ。 だから日本も防衛力を強化しなければならない、ということになる。 そのような対中強硬論に付け入る隙を与えないためにも、日本は外交 力で中国に先駆けて中国政府に抗議すべきであった。 中国は如何なる弁明も出来ないはずである。 それにもかかわらず、日本政府はまるではれものに触るようにこの 問題を封じ込めようとしている。 メディアもまた、対中強硬論者の産経新聞以外はこの事件を取り上げ る様子はない。 結果として日中関係はますます悪くなっていく。 護憲論者こそこの問題を取り上げなくてはならない。 野田民主党政権は本件については中国に強く抗議し、貸しをつくる ようにしなければならない。 それが平和外交の外交力というものなのである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)