□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月2日第769号 ■ ============================================================= 20年前に破られていたこの国のシビリアン・コントロール ============================================================= 11月2日の毎日新聞「発信箱」で「大人の論議」という見出しの コラムがある。 社会部の滝野隆吉記者が書いている。 その中で滝野記者は、「いまだから話せる秘話」として次のような エピソードを書いていた。 「いまだから話せる秘話」とは滝野記者が「いまだから話す」と いうのではない。 滝野記者は先月(10月)横須賀市の海上自衛隊施設で行なわれた 「ペルシャ湾部隊派遣20周年記念行事」に出席して、そこで当時の 指揮官や隊員たちと話をしたという。 20年といえば生まれた子が成人する歳月だと感慨を胸に語り合っ たという。 その時に自衛隊員らが「いまだから話せる」と語った事を滝野記者 は「発信箱」で書いているのだ。 そのさわり部分はこうだ。 「・・・『軍隊色』を嫌った政権政党幹部から、出港時の軍艦 マーチ演奏を止められた。当時の新聞には『呉音楽隊の軍艦マーチに 送られて』とあるから、海自幹部が意地を見せたのだろう・・・」 滝野記者が誇らしげに書いたこの記事に、私は20年前に深刻な シビリアン・コントロール逸脱が行なわれていた事を知る。 自衛隊が、とくに海自が、自分たちが旧陸軍帝国を継承していると 自負していることは様々なところで書かれてきた。 事実、隊員の中には帝国軍人の子息がかなりの数で存在する。 そして、自衛隊が設立された時、自衛隊法施行令で海自の自衛艦旗 を帝国海軍の艦旗である16条旭日旗としたことも知っている。 これが公然と使われている。 護憲派の立場から見れば、このことがまったく問題視されないこと 自体が異常だと私は思うが、その事をここでは論じない。 ここで問題にしたいのは、政権党幹部から止められた軍艦マーチ 演奏を海自が無視したという事実だ。 それを公然と記者に話す現役自衛官と、そのことを記事にする滝野 記者の意識に驚く。 いうまでもなく、ペルシャ湾への掃海艇派遣は、いまでは当たり前 のようになった自衛隊の海外派遣の嚆矢であった。大きな憲法論議を 引き起こした。 その時に、海自が政権党幹部の指示を平然と無視していたのである。 それから20年、いま野田政権になって南スーダンへ重装備をした 自衛隊が公然と派遣されるようになった。 しかし国会でそれが問題にされることは無い。 滝野記者はその記事の中で次のように書いている。 あの時は掃海艇派遣を機に「海外派兵」に突き進み、平和憲法に 穴が開いて崩れるという「アリの一穴」と言う言葉が良く使われたが、 自衛隊はその後国際貢献を重ね、決して軍国主義に成り下がっては いない。後藤田(正晴)氏の心配は杞憂だった、と。 私の認識は真逆だ。 このまま行けば自衛隊はますます危険にさらされることになる。 悔やむ時が来る。そしてその時にはいくら悔やんでも遅いのだ。 なぜその事が自衛隊も滝野記者も分からないのだろうか。 なぜ護憲政治家たちは黙っていられるのか。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)